2024年4月19日(金)

復活のキーワード

2013年4月16日

 そもそも「なぜ企業ばかり優遇するのか」という点について、国民にしっかりと説明すべきだ、というのだ。2011年度に企業が生み出した付加価値は275兆円にのぼり名目GDP(国内総生産)の6割弱に相当し、雇用者報酬約177兆円が個人消費の源泉になっていること、全雇用の約75%を企業が担っていることなどを会議で坂根氏は説明した。経済における「企業」の重要性を改めて指摘したのは、民主党政権時代にしばしば企業を軽視したり時には敵視する議論がまかり通っていたからだろう。

 だからと言って、企業すべてを国が支えろと坂根氏は主張しているわけではない。「勝ち組ないし勝ち組になるポテンシャルを持つ既存分野に重点投資すべき」というのだ。弱者どころか敗者となった企業に国が支援すれば、いわゆるゾンビ企業が誕生し、強者のはずだった企業を蝕んでしまう。

負け組み事業からは撤退
コマツの事業戦略

 実際コマツは、自社の事業を内部で「勝ち組」「負け組」に分け、負け組の事業や商品からは撤退、勝ち組に特化している。今では世界ナンバー1もしくはナンバー2の製品が全体の85%を占める。コマツが円高下でも高収益をあげてきた背景にはこうした「構造改革」があったのだ。その過程で、2万人いた従業員をリストラで1万8000人に縮小したが、成果が表れた現在は2万2000人にまで増加した。そんな自社の事例を示すことによって坂根氏は、ともすると「弱者救済」に流れやすい政府の産業政策にクギを刺したわけだ。

 「強い企業をより強くする」と言うと、「弱者切り捨て」「弱肉強食」と批判する声が挙がる。だが、企業の場合、現実は異なる。企業が倒産しても、他社の雇用の場があれば、個人が切り捨てられることにはならない。むしろ、敗者の企業を国が支え続ければ、競争を歪めるだけではなく、支えるために費やした費用は早晩国民にツケとして回ってくる。それならば、強い企業をより強くする政策を明確にして、雇用創出を促した方が国民のためにもなる。

 先例がある。ドイツだ。シュレーダー前首相時代の03年3月、「アジェンダ2010」という構造改革策を打ち出した。「ドイツ流成長戦略」と言ってもいいだろう。当時、グローバル化する経済に乗り遅れたドイツは、深刻な「成長の壁」にぶつかっていた。


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