日本の漁業は崖っぷち

2013年3月27日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 平成12年(2000年)の農林水産業のホームページに、こんなやり取りが残っています。小学生からの「漁獲量が減少している理由をおしえてください」という質問で、それに対する同省の答えは次のようなものでした。

 「漁獲量が減少しているおもな理由は、いわし漁の大幅な減少と遠洋漁業の減少です。いわしの漁獲量が減少した原因は、海水の温度が少し高くなったのではないかといわれています。また、遠洋漁業の減少は、過去においては、日本の漁船は外国の近海まで行って魚をとっていましたが、外国の人も自分達で魚をとろうということになり、日本の漁船は、外国の近海で魚をとりにくくなったことが要因となっています」

 海外の水産業のことをよくご存知でない方々にとっては、全く違和感の無いやり取りだと思います。これに、学校で使用している地図帳にも出ているグラフを合わせてみると、日本の水産業は衰退している産業という、すでにある漠然としたイメージと重なることでしょう。 

スペインやハワイの横からサンマ?

 義務教育で使用している地図帳(帝国書院)に「世界から集まる日本の食料」という項目があります。ところが、その図は恐らく20年以上更新されていないと思われる部分が含まれています。そもそも魚が獲られている場所が正確に描かれていません。スペイン沖やハワイの横でサンマが漁獲されていたり、それが日本に輸入されていたりなどということは、聞いたことがありませんし、大量に輸入されてスーパーで販売されている、お馴染みのチリのサケやノルウェーのサバの絵もないので相当古いと思います。また1992年から20年以上禁漁となっているカナダ(大西洋)のマダラの漁場の絵もそのままです。

 それでも学校から指摘がないということは、試験に出題される内容でもなく、当たれる情報源が分からないだけでなく、そもそもただ関心が低いからではないでしょうか? 漁業は、日本のような先進国が行う産業ではない。従事しているのは地方の高齢者の方々で、時間の経過と共にやがてなくなっていく産業、という程度の認識の方が一般的なのでしょう。しかしながらこのような世界と比較するで見ていただくと、見方が一変するのではないかと思います。世界の水産物の供給は右肩上がりに増加しているのです。さらに世界の水産物の輸入推移等を見ていくと、水産業は一大成長産業であることが分かってきます。

 デフレと超円高で水産物の価格が上がらないことに慣れて(麻痺して)しまっている現状は、ある意味で恵まれていると思います。「スーパーでも、飲食店でも魚は普通に買ったり、注文できたりするし、特売だって頻繁に行われている。どこに問題があるというのか?」と考える方も多いでしょう。ところが、世界の水産物の需要は、生産の増加を上回るペースで伸びてきており、気がついたら輸入が難しくなり「魚が足りない」という事態になりかねない状態になってきているのです。

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