2024年4月19日(金)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年3月27日

診察は医院に入った瞬間から始まる

―― 精神科を受診しようとしたら予約で3カ月待ち、通院時の治療時間は3分程度という話をよく聞きます。患者が多いので仕方ないのでしょうが、逆に患者が少ない医院には行きたくもないのが普通の感覚ではないかと思います。このような状況を開業医の立場でどのように見ていますか。

芝山:予約が入らず、かなり長期間待たされるという批判があることは知っています。当院は心療内科の初診時のみ電話してから来院するようお願いしています。比較的余裕のある時間帯を知らせるためです。基本的には、辛いから来るので、来院すれば必ず診察をします。行列のできる精神科医のように1時間も診察するような時間は割けませんが、眠れない、辛いという病状を取り除くことはできます。午前中は内科に来る高齢者が多く、午後は心療内科が多い。お年寄りは早起きですし、うつ状態の人は早起きは苦手というのが一般的ですから自然な形ともいえます。

 診察時間は、グラフを見てもらえればわかりますが、患者さんの混雑度と症状の程度で変わります。心療内科を平均すると初診で約10分、再診で約5分です。短いと思われるかもしれませんが限られた時間内で、来院したすべての患者さんを診るためには仕方がありません。繰り返しですが、まずは辛い症状を取り除くことを優先して、すぐに診ることを重視します。こうすることで待ち時間も15分程度ですみます。待ち時間の少なさを話すと信じてもらえないのですが、本当です。

 できるだけ多くの患者さんを診察することを重視すれば短い診察時間になりますが、私は直接、患者さんと話をすることだけが診察だとは考えていません。スタッフの協力を得て、患者さんが待合室のどこに座っていたのか(うつ症状の人は後ろの端に座る傾向が多い)、トイレに頻繁に行っていた、薬剤師からの情報(当院は院外処方です)など、医院の扉を開けたときから出るまでの行動、状態も参考にしています。また、診察室を出る際にも会話を交わす「ドアノブ・クエッション」も状態を知る上で参考になります。これは刑事コロンボ方式などと呼ばれています。


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