ベテラン経済記者の眼

2013年3月26日

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 今年の春闘は久しぶりの明るさに包まれた。前半の山場で、春闘相場に影響力を与える電機や自動車大手の集中回答では、注目されていた年間一時金(ボーナス)について、前年を上回る組合側の要求に満額回答が相次いだ。また定期昇給やこれに相当する賃金制度維持分でも組合側の供給を受け入れ、2008年のリーマン・ショック前の水準になったところも多かった。

 経営側は当初、「企業によっては定昇の延期や凍結もありうる」という慎重な姿勢を示しているところもあったが、ふたを開けてみると多くの企業が賃上げに同意した。ここ数年なかった好結果だったといえる。

新聞各紙は概ね好意的な論調だが……

 背景には株価が回復し、経済に明るさが出ていることに加えて、円高から円安に急激にふれたことで、輸出企業の採算が急速に回復していることがある。景気が好転せず、賃金の下落が続き、デフレの連鎖に苦しんでいた近年の状況から比べるとその変わりように驚くほどだ。

 実際、新聞各紙の社説にも好意的な論調が目立ち、「アベノミクスへの期待が好影響を与えた」(読売)、「人件費をコスト削減の対象とばかり捉えてきたことへの反省の機運も感じられる」(朝日)と一定の評価を行った。

 踏み込んで論調を展開したのは毎日新聞の社説だった。毎日は「政府の経済政策が企業活動や労働条件の改善と緊密に連動しなければ、世界経済の急激な変化に対応し、有効な政策効果を上げることはできないだろう。その上で、政府の介入がもっと必要なのは非正規社員対策であることも指摘したい」と冷静に注文をつけた。また産経新聞が「横並びで交渉する春闘も見直すべきだ。これまでは、賃上げの体力がある企業も、余力のない企業に配慮して賃上げを見送ったり抑制したりするケースもあった」と別の視点から指摘したのも注目させられた。

政府主導の賃上げへの違和感

 今回特徴的だったのは、コンビニ大手など流通業界が賃上げを主導したことだった。安倍首相が企業に対して報酬の増額を唱えたことにいち早く呼応する形で、ローソンが一時金の増額を決定し、ファミリーマートも追随。コンビニのライバルとなる流通大手のセブン&アイ・ホールディングスもベースアップを発表した。トヨタも組合員平均で205万円となる一時金要求に満額回答し、豊田章男社長はこの結果をわざわざ首相官邸まで報告に行ったほどだ。

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