World Energy Watch

2013年3月28日

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 本連載の『「夢」と呼ばれる日本の「革新的エネルギー戦略」と欧州・米国の現実路線』でも触れたように、欧州では天然ガス価格が上昇しているために相対的に安価な石炭の使用量が増えているが、石炭の使用による大気汚染の影響も大きい。欧州のNPO法人環境と健康連合(Health and Environment Alliance)によると欧州での石炭火力が引き起こす健康被害は年間428億ユーロとされている。最も大きな健康被害を引き起こしているのは発電の大部分を石炭火力に依存しているポーランドで、その額は80億ユーロだ。東欧諸国では予算の問題から依然として十分な環境対策が取られていないことが影響しているのだろう。燃焼する石炭の品位に注意し、日本の発電所並みの環境対策を欧州の石炭火力が行えば、問題の大半は解決するが、直ぐの対応は困難だ。

温暖化にどう対応するのか

 石炭の燃焼は目に見える大気汚染に加え温暖化問題も引き起こすことになる。化石燃料の中では石炭が排出する二酸化炭素が相対的に最も多い。先進国は二酸化炭素の排出抑制に努めているが、経済発展が続く新興国では、エネルギー消費量が大きく増加することから排出を抑制することは難しい。世界最大の二酸化炭素排出国である中国もエネルギー効率の改善などだけで排出の絶対量を削減することは難しいことから、国内総生産(GDP)当たりのエネルギー消費量を削減する効率目標を立てている。

 例えば、2010年から15年の間、単位GDP当たりのエネルギー消費を16%、二酸化炭素排出量を17%削減する目標を立てているが、絶対数量は大きく増加する。米国エネルギー省は、中国の10年の二酸化炭素排出量82億6200万トンは15年には93億8600万トンと13%増加すると予測している。

表:中国の二酸化炭素排出量予測
(出所)米国エネルギー省
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 中国の二酸化炭素排出量は今後とも増加を続けるが、石炭消費がその大きな原因となっている。10年から35年までの二酸化炭素排出量予想は、表が示す通りだが、この間中国の石炭消費量は毎年2.4%ずつ伸び、35年には10年の1.54倍に達すると予想されている。

 対策の一環として中国は二酸化炭素を排出しない電源の設置に力を入れている。風力発電設備の設置増加量では米国を抜き、太陽光発電ではドイツを抜き、いずれも世界一になっている。また、17基の運転中の原発に加えて、28基が建設中だ。現状の計画でも原発は200基に達することが決まっている。原発の設備量は2020年には5800万kWと日本の原発設備量を超え、2030年には2億kWに達する見込みだ。英国が温暖化対策として原発の新設に力を入れているように、原発は有効な温暖化対策だ。しかし、中国では原発建設も電力の需要増には追いつかず、化石燃料の消費は増加する一方だ。

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