2024年4月20日(土)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年4月9日

 当社利用者の年代層をみると、30歳代が最も多く、次に20歳代、40歳代、50歳代と続きます。メンタル不調になる要因は人それぞれで多様ですが、そのうちの一つとして若い世代に多いのが上司との感覚のズレだと思います。頑張れば見返りがあり、安定して働けた時代に生きた上司と、不安定の中で働き出した若者では、仕事だけでなく付き合い方などに差があります。不安と背中合わせで生きてきた若者と上司が同じ価値観をもてないのは当然ともいえます。しかし、一方的な考え方を押し付けられていけば、どこかに歪みが生じてくる。そこにうつが増える背景があるのではないでしょうか。

 会社、上司はそのことに気が付くべきです。そして、若者も人間関係で悩む自分の傾向性に気づき、思いつめないようにする努力が必要です。利用者でみる傾向性ですが、真面目で完全主義者という人が多い。「こうしなければいけない」という思い込みを強くもっており、完全を追求する故にどこまでもやり遂げようとします。完全主義がすべて悪いわけではない。メリット面もみながら、すべてを否定するのではなく、ゆるやかに段階を追って考え方を変えていくことが大事です。

 そのように思考スタイルを変えていくためのトレーニングを実施しています。これが職場復帰につながる道です。朝9時から夕方5時まで、一人ではなく複数でチームを作りプログラムに沿った作業をします。プレゼンなど発表の場も設けます。この流れの中で他の人の事例を見て、他へのアドバイスを行い、その逆もあって自身を知り、本来の自分らしさを取り戻していきます。もちろん、一回で傾向性が変ることはありません。繰り返しながら自分で理解し行動に移していきます。3カ月から6カ月をかけます。

90%の職場定着率をさらに高める

―― 利用者をどのようにして募るのですか、利用料は、具体的なサービス内容なども教えてください。

復職に向けプログラムに取り組む

伊藤:利用者は医師からの紹介や利用者自らがネットなどで知り訪れます。現在の利用者数は、登録者を含め約100人です。利用希望者とは最初に面談し「個別支援計画」を作ります。施設内でのプログラムだけにこだわらず、必要に応じて趣味やサークル活動など施設外での活動も取り入れて職場復帰を目指します。進捗状況を面談でチェックし、5段階のステップを経て復帰していく計画です。ですから最初にいきなり、うつ症状に陥った原因などを深堀することはしません。未来に視点を置き、今できることに取り組んでもらいます。自分の考えや行動の癖を客観的に見られるようになると、何が原因だったのかも自身で気が付くようになります。それが再発を防ぐ鍵になります。

 利用料ですが、当社は東京都指定の障害福祉サービス事業者であり、障害者総合支援法に基づいて運営していますので、自己負担金は1回800円。前年度の課税所得により月額9300円の上限が適用されます。社会復帰支援は、職場復帰と再就職・就労継続の2つのサービスを提供しています。


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