2024年4月17日(水)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年4月9日

 職場復帰ですが、生活リズムの安定や体力の回復、自己分析、疾病理解、ストレスコントロールなどで、病を再発させないためのトレーニングを行います。実践面では経済紙の記事を選び要約してプレゼンすることやビジネス研修ゲームなども取り入れ、リフレッシュとしてスポーツ、農作業などの体験も入れています。これらの活動は希望があれば、月次レポートとして、本人了解の上で会社の人事や主治医・産業医との共有を図っています。

 また、再就職支援は、昨年5月から始めたサービスで、目的は実践に近い中で疾病と向き合いながら納得できる就職と就労継続を実現させること。職場復帰のプログラムに面接ロールプレイ、職務経歴書レビューなどを取り入れています。

 これまでの実績ですが、サービス開始後から3月末までに61人が職場復帰し、定着率は90%です。データとして見るには、さらに時間の経過が必要ですが、復帰後6割が再び休職するという一般的な現状からみて、十分な手応えを感じています。ただ、現状に満足せず、プログラムのさらなる拡充を目指し、スタッフも経験を重ねていくことで定着率を上げていきたい。

株式会社で多様なニーズに対応する

―― 社会貢献的な事業ですがNPOではなく株式会社にしている理由は。

伊藤:株式会社は利益優先であり、支援事業という性格には合わないのでは、というご指摘を頻繁にいただきます。ただ、私が目標にするのは、職場復帰を専門的に支援するインフラをつくること。そのためには、事業として継続・発展させていく必要があります。NPOであれば限定的な対応しかできません。株式会社であるからこそ、多様なニーズに対して資金面も含め柔軟な対応ができます。18人のスタッフの平均年齢は39歳。みんな社会貢献への崇高な気持ちをもっていますが、家族を含め生活を支える、よりよい形を作ってあげなくてはいけません。NPOならば補助金も出ますので、一面として楽になるのですが、やはりそれでは私の目指す目標は達成できないというのが理由です。

―― インフラとなるような社会が支援する仕組みをどのように構築していくのですか。

伊藤:まだスタートを切った段階で、手探りでの運営と言ってもいいかもしれません。もっと多くの経験が必要ですし、時代の変化をしっかりと捉え、プログラムも常に微修正しながら進むべきだと考えています。しっかりと実績を出していますが、それで満足するのではなく、すべてを断定しない、より良いものを求めていく取り組みを続けていきます。

 現在は個人向けの展開ですが、近い将来に法人向けの展開も始める方針です。インフラになるような展開としては、私たちの取り組みがしっかりと成果を出せる、職場復帰して高い定着率を示すことが大事です。認めてもらうことが先決です。その上で、共感してもらえる人がいれば、私たちのコンテンツを提供する形で全国に普及していきたいと考えています。フランチャイズ展開という意味ではありません。利用者のみなさんが「うつを経験して良かった」と苦しかった時期を乗り越え、振り返って言えるようになることが目標です。

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか?


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