2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年4月12日

 夫人が前面に出ることのない中国外交ではこれまで、孤児院を訪れるなどの場面で子供たちに囲まれる役割は主席がこなしてきた。張り付いたような笑顔で子供たちに囲まれる胡錦濤の姿はこれまで何回も見てきたが、当然のことそれは中国のイメージを引き立ててくれるようなものでなかった。

 それを考えれば彭麗媛の存在がいかに大きな外交資産であるかはあらためて言う必要もないだろう。

 とくに近年、尖閣諸島をめぐる日本との対立や南シナ海をめぐってASEAN諸国との間で火花を散らしたことが世界の注目を集めるようになると、急速に台頭した中国のイメージとも重なり国際社会には中国に対する警戒論が高まってきていた。

国際社会で高まる警戒論を
和らげるのは中国にとっても喫緊の課題

 そんな折だけに、少しでも中国の対外イメージを和らげるような外交を展開することは中国外交にとって喫緊の課題と考えられていたのだ。この点から見ても彭麗媛は中国にもたらされた慈雨だったわけだ。

 国内の反響はもはや社会現象に近いものとなり、彼女がモスクワ到着時に羽織っていたコートはまたたくまに話題となり売り切れてしまったというのだ。しかもそれが海外の高級ブランドではなく国産品であったというのだから、習指導部が力を入れる官僚の贅沢禁止の政治スローガンにも合致するという、「よくできた」というか、「よく計算された」ファーストレディーという他ないのである。

 こんな彭麗媛には海外のメディアからも熱い視線が寄せられている。しかし、これは中国にとっては諸手を挙げて歓迎できるわけではないらしい。

 北京の夕刊紙記者が解説する。

 「やっぱり心配されるのは習国家主席の存在が霞んでしまうことです。そのため国内メディアには夫人を自由に取材させますが、海外のメディアには一定の規制をかけているようです。このことはつまり、放っておいたら海外のメディアは夫人の方ばかりを追いかけて習主席より大きく扱いかねないということなのです」

 実際、フランスのテレビ局などは彭麗媛の身に着けているものを詳細に報じ、ファッションチェックに余念がない。


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