世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月24日

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 米国は、アジア回帰に際しては、中東から撤退してアジアに集中するという単純な図式ではなく、中東における米国とアジア双方の利益を守る必要があり、そうすることが責任あるやり方である、とカート・キャンベルが、3月19日付FTで論じています。

 すなわち、中東と南アジアは米国のパワーと威信の墓場であるから、ワシントンは、これらの地域での損失を出来るだけ迅速にカットし、アジア太平洋のより平和的で利益を生む地域に全ての関心を振り向けるべきであり、それは、米国の国益にかなうのみならず、アジア諸国の望むところでもある、という、米国のアジア回帰のついてのカリカチュアがある。

 このカリカチュアにおいて、最も重大な誤りは、アジア諸国が、米国が中東から急速に撤退しアジアに関心を集中させることを強く望んでいる、としていることである。これは明確な誤りであり、重要な傾向と現実を理解していない。

 過去10年間、アジア諸国は、中東と南アジア全域の平和と安定の促進に、相当深く関与してきた。ブッシュ政権のアジア政策の重要な貢献の一つは、東方の興隆しつつある国々に、西方の国々が課題に取り組むことを助けることに、より積極的な役割を果たすようにさせたことである。

 その結果は、めざましいものである。日本は、アフガンの市民社会構築の最大の支援者であり、韓国は、アラブの春を受けて、中東全域の開発支援のために、新設の援助機関を活用し、マレーシア、インドネシア、タイといった東南アジアの国々は、イラクとアフガンにおいて、物質的支援を提供し、オーストラリアとニュージーランドは、アフガンに特殊部隊を派遣している。中国ですら、イランの核開発問題に関する、舞台裏での外交において、より積極的な役割を果たすようになっている。

 これらのアジアの国々は、今や、10年以上にわたって、多くの政治的資本、財政的支援、場合によっては軍事力を投じている。そうした投資が無駄にならないことが国益である。

 また、アジアの、湾岸諸国に対するエネルギー依存の増大という問題がある。アジアのオイルとガスの輸入国すべて、すなわち北東アジアの全ての国は、南アジアの安定が保たれ、強化されることを強く必要としている。米国の急激な撤退は、エネルギー安全保障の面で、許容できないリスクをもたらすことになる。

 そして、米国のパワーと威信という問題がある。アジアにおける安定化勢力としての米国の地位の重要な要素は、そのコミットメントへの信頼性である。米国が、今も続いている中東に関する利益を放棄して、尚早に撤退するようなことがあれば、アジアにベトナム戦争のような記憶を高めるだけであろう。

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