2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2013年4月22日

 火力については、大規模設備による排出ガスの規制を定めたEU指令により、老朽化した石炭設備の閉鎖が決まっている。天然ガスに関しては、イギリスは2004年から純輸入国に転じているので、設備建設が推進されるとは考えにくい。現実に05年以降に新設された設備の多くが小規模な風力であり、ガス火力は115件中、わずか8件しかないのが実情だ。苦境を乗り切るために、イギリス政府は数年前から、いくつかの政策を組み合わせて、安定供給を達成する努力を重ねてきた。具体的には、(1)洋上風力の推進と海底ケーブルの敷設、(2)国際連系線・パイプラインの拡充、(3)LNGターミナルの整備などの方策である。

 ここでは、国際連系線・パイプラインについて注目してみよう。イギリスはわが国と同様、島国だが、電力と天然ガスの両方が他国とつながっていることは、あまり知られていない。表1と表2から、イギリスが複数国と強固なネットワークを形成している点が読み取れる。距離に着目すると、ガスに関しては総延長500kmに及ぶ実績があり、電力では800kmの計画も見られる。パイプラインの歴史は計画段階を含めると、70年代にまで遡る。北海油田の開発や自由化の推進と歩調を合わせて、パイプラインが着実に稼働してきたことがわかる。電力の連系線は洋上風力の増加に伴い、今後、複数のプロジェクトが動き始めるが、そのいくつかが商業ベースで運営される予定である。電力・ガスともに事業者の所有権を調べると、単にイギリスのみならず相手国や近隣国を中心とする他国資本が関与している点が明白になる。

広域インフラ整備で安定を求める欧州

 欧州ではエネルギーと交通部門を中心に、「トランス・ヨーロピアン・ネットワークス」(TENs)という計画に基づき、インフラ整備を進めてきた。市場統合を標榜するEUは、自由化指令によって加盟国に法律改正を求めつつ、競争原理を追求してきたことは周知の通りである。しかし他方で、欧州投資銀行(European Investment Bank)などの公的資金の援助を通して、物理的ネットワークの拡充を計画的に実現してきたのも事実である。つまり、広域市場で通用するハードを提供した上で、自由に行動できるプレーヤーたちがフェアなビジネスを展開しているというわけだ。


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