ベテラン経済記者の眼

2013年4月23日

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アメリカのリークに乗せられた日本のメディア

 通商交渉ではスポーツの実況中継のように交渉の動きを逐一報じることは大事だし、もし自分が取材者であってもそうするだろう。ただ、通商交渉はきれいごとではすまない側面も多い。例えば相手、これはしばしばアメリカだが、自分の主張をぶちあげ、世の中の反応を探るためにリークする場合もあるだろう。そうした動きを踏まえて、交渉がどういう方向性にむかっているのか、解説的な要素を盛り込むことは重要だ。

 かつて日米貿易摩擦が日米間の最大の懸案だった頃、日本の多くのメディアはアメリカのリークする情報に乗せられて報道し、結局利用された面があったという「反省」を大先輩の記者から聞いたことがある。アメリカが「対日交渉リスト」をメディアにリークし、それをみて日本政府が対応に追われるという類いの流れだ。なかなか自分がこの渦中に身を置いた場合、リークの誘惑に勝てないだろうが、それはそれとして全体像をみることも大事だと思う。

 TPPに対する評価は、立場によって大きく分かれるが、筆者個人としての意見は、日本経済への経済的なメリットは大きいと思う。アメリカと韓国が昨年FTA(自由貿易協定)を結んで一年たったが、韓国の対米輸出が増えるなど一定の成果を上げていると韓国側は主張している。農業の分野について4月17日の河北新報の社説は「守れるべきもの守れるのか」と危惧を示すが、本来、守るべきはものを守ると主張するために交渉するのである。最初から負けを予測することは悲観的にすぎよう。既に進んでいる交渉に後から入るという部分でのハンディは大きいが、交渉で何を得るのか、を見極めることも報道に求められている役割だと思う。


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