2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2013年4月24日

 アイドルを目指す高校生のユイと、ドラマが暗示する海女としてアイドルとなるアキの物語は、ふたりの美少女によって演じられる青春ドラマである。

 アキ役の能年玲奈とユイ役の橋本愛のふたりのやりとりは、若さの美しさと可憐さを感じさせる。その瞬間、瞬間の映像は、観る人々の無意識のなかにある、アイドルの青春ドラマと重なっているのではないだろうか。それは朝に放映される連続テレビ小説の伝統的な持ち味である、こころに染み入るような余韻ともなっている。

 「あまちゃん」を観ているわたしは少なくとも、ふたりの物語から、薬師丸ひろ子や山口百恵、そして内藤洋子を思い浮かべるのである。主役である彼女たちとともに、脇役として絡み合った美少女たちの面影とともに。映画は「Wの悲劇」であり「伊豆の踊り子」である。

東北出身のクドカンが脚本を手がける

 脚本は演劇家であり、映画監督でもある宮藤官九郎が手がける。宮城県の旧若柳町(現在の栗原市)出身の宮藤が育った町と、卒業した県立築館高校の名前をみると、青少年時代を同じ県で過ごしたわたしには、その美しい田園地帯と名門高校のバンカラの気風がよくわかる。広大な穀倉地帯から北西を見上げれば、岩手県につながる奥羽山脈の名峰・栗駒山がある。

 大和朝廷が北方の守りとした宮城県の多賀城から北に向かうと、作家の宮沢賢治や太宰治、そして板画の棟方志功ら、京や江戸の文化の系列のくくりを超えるような芸術家が生まれるのではないか、というのはわたしの考えである。

 「宮藤ワールド」もまたそうした北の文明の地下水脈が表に出てきたのではないか。宮藤が脚本を手がけた、映画「木更津キャッツアイ」(金子文紀監督)や「GO」(行定勲監督)は、ドラマの筋立てばかりではなく、登場人物のユニークさと演技において、日本映画のどの系譜につながるのか、その位置づけがわたしには困難である。

 「あまちゃん」もそうした宮藤ワールドで繰り広げられるドラマである。


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