2024年4月19日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2013年4月25日

 昨年、総選挙の圧勝により自民党が3年ぶりに政権を奪還し、昨年12月26日に安倍政権が誕生した。近年の選挙では政権公約の中身、特に政策が以前より注目されるようになったのではないか。今回『現代日本の政策体系――政策の模倣から創造へ』(ちくま新書)を上梓した政策研究大学院大学の飯尾潤教授に話を聞いた。

飯尾潤氏(以下飯尾氏):私は政策研究大学院大学という政策を研究対象とする大学に勤めていることもあり、政治学者の中でも日常的に政策について考えている方でしょう。政治のアウトプットは政策ですが、20年ほど前から日本での政策議論に不満を持っていました。

 たとえば日本では、イデオロギーから自動的に最善の政策が出てくると考えてしまう人が多い。また、長らく政策立案に関わってきた官僚は、過去の政策の延長線上に新たな政策を立案する傾向がある。その間がないのです。さらに言えば、「政治は誰かに任せておけば安心だ」という風潮の中、国民が政策に対し理屈できちんと納得することが少なすぎるのではないか。こういった旧来的な政策のあり方ではなく、新しい政策や政党のあり方を考えるためには発想の転換が必要なのではないかと考えています。

――日本も高度成長期を経て、先進国になった現在、どのような政策や政党に対する発想の変換が求められるのでしょうか?

飯尾氏:戦前の日本は小さな政府で、政策も少なかった。しかし、戦後、急激な都市化や高度成長期を迎え様々な政策が必要になりました。当時は、急激な経済発展により生まれた社会のひずみを正し、経済発展だけでは解決できない社会保障に関する政策が必要でした。当時の先進国ではすでにそのような問題を克服していたので、先進国へ視察したりして勉強してきました。つまり、海外にすでにある政策モデルを輸入していたのです。

 しかし、1980年代以降、日本も先進国の仲間入りをしたことにより、欧米先進国と同時もしくは先に問題が起こる場合も多く、欧米での政策の結果が明らかになる前に日本での対処が必要になることが増えています。つまり、他の先進国に先駆け、問題を解決する「政策的構想力」というべき能力が求められる時代になったのです。


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