2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月3日

 アメリカは、世界的な責任をもっているので、引き籠るわけには行かない。アメリカがしなければ、誰か他の国がその空白を埋めることになろう、と述べています。

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 これは、苦渋に満ちたスピーチであると言ってよいでしょう。

 従来のペンタゴンの立場は、Sequesterが実施される前に、国防費の節約は十分やって来ており、それ以上はとてもできない、というものであり、現在も本音はそうなのでしょう。

 昨年6月のシャングリラ会議では、パネッタ国防長官は、国防予算の制約については、国防費の4870億ドル削減については、軍の合理化によって対応すると述べ、そのコンテクストで、太平洋と大西洋の米海軍艦船の比率を60対40にするという考えも披瀝しています。そして、その後の5000億ドルと言われているsequesterについては、「sequesterは、本当の危機でなく、人工的に作られた危機であり、議会が、自分自身に対して最後通牒を出しているだけである。共和党も民主党も、これを実施すれば破滅的だと知っているのであるから、最終的には両党は何とかこの問題を解決するであろう」、と述べ、社会保障への切り込みも増税もあり得る、と示唆していました。つまり、当時は国防長官自身、sequesterのようなとんでもない削減は実現されるはずもない、と思っていたのです。

 風向きが怪しくなりだしたのは、年秋の交渉が膠着し、年末の交渉が不成立だったあたりからです。民主、共和両党の交渉チームの顔ぶれが強硬派ばかりなので、妥協が難しかったというのが一般の観測でしたが、大統領選挙に勝ってますます頑固になったオバマの強い意思が、最大の要因と思われます。民主党が社会保障の減額に応じれば、共和党も、国防費のためならば、増税に応じるでしょうが、オバマがどうしても社会保障の減額に応じないのではないかと推測されます。それは、あくまで推測に過ぎませんが、今後とも楽観は許されません。

 とすれば、米国防費のドラスティックな削減は避けられなくなります。その対策の一つとして、ヘーゲルは同盟国の貢献を期待しています。そうなると、日本の防衛費増額は、対米外交の強力な切り札の一つとなる可能性があります。そういう観点からも、日本は、防衛費の大幅な増額をしていく必要があります。

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