40代からの脳力の磨き方

2009年3月27日

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久保田競 (くぼた・きそう)

東京大学医学部を卒業後、同大大学院で脳神経生理学を学ぶ。1967年に京都大学霊長類研究所で助教授から所長を歴任し、京都大学を退官。京都大学名誉教授に。現在も研究活動を続けながら、森之宮病院と日立製作所基礎研究所の顧問、国際医学技術専門学校の副校長を兼任。著書に『脳を良くする小さな習慣』(アスキー)『衰えない脳は14日でつくれる』(大和書房)ほか。

アルコールは適量であれば脳の働きをアップ

 最近は、さまざまな種類のサプリメントも販売されていますが、「脳のためによい」と実証されたものはひとつもありません。とはいえ、サプリメントは疫学的な調査を行ったうえで、「健康によい」ということで許可されているものです。いろいろ飲んでみて、自分に合っていると思えば続ければよいと思います。

 アルコールについては、適量であれば胃液の分泌を高めて食欲を促進し、楽しい雰囲気で飲めば腹側被蓋野を刺激して脳の働きをよくします。動物実験では、アルコールを多量に飲むと脳細胞が壊れていくという結果もありますが、われわれが二日酔いになるくらいの量では、脳の細胞が死ぬまでには至りません。その前に、肝機能に悪影響を及ぼしますのでそちらのほうが問題です。

 適量は、食事指導でよくいわれている量と同じで、缶ビールなら1缶(500ml)、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度です。脳のためにも、適量を守って楽しく飲むことをおすすめします。

「料理上手は頭がいい」は本当だった!

 おいしいものを食べるとき、ぜひ挑戦していただきたいのは、料理です。料理は、多くの工程を頭のなかで段取りよく組み立てながら、いくつものメニューを同時進行で進めていくという知的な作業です。そのため、料理をするときは、前頭前野がよく働き、脳を活性化させるのです。

 研究の結果から、料理をすると、前頭前野のとくに10野というところがよく働くということがわかっています。知能指数の高い人の脳を調べると、この10野と、46野というところが大きくなっています。おそらく神経細胞が作られて、回路を作るシナプスも増えていると思われます。

 この2つは、創造力をつかさどる場所です。46野は、前述したワーキングメモリーを働かせ、考えたり決断をくだす場所でもあります(脳の領域については、前回をご参照ください)。

 男性は社会に出て働く人が多く、46野が発達する傾向が強く、女性は家庭で家事や料理など段取りを考える作業が多いため、10野が発達する傾向があります。「料理上手の女性は頭がいい」といわれますが、それは、最近の脳の研究からも裏付けられています。

 仕事中心の生活の人はあまり10野を使いませんから、時間があるときは料理をするとよいでしょう。料理をすることは、認知症の予防にも使えます。これまで料理をやったことがない人も、脳全体の活性化のために、ぜひ始めてみてはいかがでしょう。

 自分で料理をして、おいしいものを食べていれば、脳力は間違いなく磨かれるのです。

【連載】40代からの脳力の磨き方
第1回:「頭は使えばよくなる」は本当だった!
第3回:脳は適度な運動でまだまだ活性化できる
第4回:「脳に良い習慣」で人生を活性化しよう!

illustration:秋田綾子

肥満は脳の働きを阻害する
おいしいものを食べることで気をつけなければならないのは、肥満です。というのも、肥満は体にとってよくないだけでなく、脳にも悪影響を及ぼすためです。実際、BMIが35くらいの肥満度の高い人の脳を調べると、前頭前野のなかでも創造力や決断力をつかさどる46野と運動に関連する運動野などが小さい傾向があります。これは、肥満により体を動かさなくなるためと思われます。おいしいものを食べても太らないためには、食べることに頭を働かせるように常に心がけることです。自分の必要摂取エネルギーを踏まえて、何をどれくらい食べればよいか、学習しながら食べるようにしましょう。また、ただ漫然と食べるのではなく、食べものの匂いをかいだり、食材を確認しながら食べるだけでも効果があります。一方で、適度な運動を習慣づけることも大切です。運動が脳に及ぼす影響については、次回で詳しくお話します。

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