2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2013年5月23日

 1999年から2006年にかけて、中国はロシア製ソヴレメンヌイ級駆逐艦4隻の引き渡しを受けた。94年から07年にかけては新型の国産駆逐艦を5隻建造。91年から08年にかけては種類の異なる4種類の新型フリゲート艦を20隻建造している。

 矢継ぎ早に打ち出される新たな装備は、中国が艦船の能力を漸進的に高める意図を物語っている。また、急速な艦船建造が可能なのは、中国が軍用建設に十分適した造船所を有するからだ。

 今年には、中国唯一の空母「遼寧」が母港に到着した。遼寧は近年の中国艦船が受けたことのない大きな注目を集めたが、まだ実戦に向けた運用はされておらず、特段能力の高いプラットフォームでもない。それでも遼寧の就役は、将来的に効果的な空母部隊を築こうとする中国の願望を表している。

 しかし、比較的急激な軍備増強にもかかわらず、中国はまだ、中国の海上輸出が絶対に外国軍に封鎖されないために必要な作戦行動を実施する海軍力を持っていない。達成までには時間がかかり、現在はほとんど手付かずの輸送艦を多数建造する必要もある。

 また、中国は南シナ海および東シナ海で活動する様々な海洋機関の指揮系統の統一を図る。今年3月、政府は様々な法執行機関や漁業監督機関、沿岸警備隊、密輸取締警察を国家海洋局に統合した。中国は沿岸水域の支配力を高める一方で、国家海洋局の船と外国船との偶発的な衝突が生じる可能性を減らせるはずだ。

 こうして見ると、南シナ海、東シナ海における中国の行動は、一段と攻撃的な行動を取ろうとする願望と、そうした行動が手に負えなくなる事態を確実に防ごうとする願望の両方が見える。

 一方の米国側は、アジアへのリバランスを始めている。11年11月、バラク・オバマ大統領はアジア太平洋地域を最優先すると宣言した。米国は環太平洋経済連携協定(TPP)など幾多の分野で行動を起こしているが、本稿は軍事的側面に焦点を絞りたい。

中国艦隊を上回る日米の能力

 オバマ大統領の宣言以降、米太平洋軍司令部はアジアへのリバランスの軍事的な部分を実行に移し始めた。米海軍は向こう数年間で保有する船舶を移動させ、6割を太平洋地域に配備する。それに加え、太平洋艦隊はすでに、米海軍のどの部隊にも先駆けて最新鋭の装備を取り入れている。実際、新しい沿海域戦闘艦4隻の1隻目が今月シンガポールに配備されたところで、米国は地域の水上艦の能力を向上させている。

 米海軍は世界各地に分散しているものの、原子力空母11隻、 ヘリコプター空母・軽空母10隻、攻撃型原子力潜水艦53隻、巡洋艦22隻、駆逐艦61隻、フリゲート艦18隻を保有しており、中国の空母1隻、主力水上戦闘艦79隻および潜水艦戦力よりも数が多いだけでなく近代的でもある。


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