2024年4月17日(水)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年5月27日

 日本でも、来年4月からの消費税率引き上げを前に駆け込み的な需要増が想定されているが、日本企業も米国企業と同じように利益の事前還元をすることが望まれる。企業が駆け込み的に来年度前に賃上げ、追加配当、追加ボーナスを支払えば、増税後の景気を下支え、家計にとっても増税の痛みを和らげることになる。

日本の復活本気度が試される

 物価が上昇し、名目成長率が高まるならば、金利が上昇するのは当然だ。しかし、巨額の財政赤字がある日本の場合、名目成長率が高まることは望ましくても、国債金利が上がっては困る矛盾を抱えている。せっかくのアベノミクスも、「四本目の矢」である財政健全化を同時に進めなければ、望ましい結果を達成できないことになりかねない。

 その点、現在の米国の財政健全化進展は、日本に景気と財政健全化という二兎を追う選択肢があることを示している。それは、デフレと失われた20年からの脱却を景気回復で図りつつ、財政も増税や歳出抑制で健全化させる方向だ。

 すでに円安で、政府の拡張的な経済政策なしの景気回復が実現しつつある。一方で、来年度からは消費税率が3%上がり、財政健全化に向けた動きも進む。日本経済が復活するには、一段と企業活力と民間消費を促しつつ消費税率の引き上げを乗り切る以外にないし、今年になってからの米国経済の展開は大いに参考となる。

 アベノミクスが本格始動する中で、米国の財政健全化進展や市場の動揺は、日本の経済復活に向けての本気度が景気回復だけではなく、財政健全化でも問われていることを示している。

 渾身の力で日本経済を立て直そうとするアベノミクスに対して、市場が動揺するようでは心もとない。ここは、四本の矢を一刻も早く揃えて、万全の形で日本経済復活を果たしてもらいたい。

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