田部康喜のTV読本

2013年5月29日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 フェイスブックのつながりによって、大企業の研究所の主任研究員を務める、野木祐子役の夏川結衣が主催する山登りのイベントの宿泊先のペンションが舞台である。捜査官の岸谷もこれに参加している。

 野木の部下の女性がペンション近くのつり橋から谷底に墜落して死亡する。地元の警察は自殺と断定する。岸谷は納得しない。湯川を連れ立って、再びそのペンションを訪れる。

 岸谷は野木が犯人である可能性が高いと推察している。

 立ちふさがる野木のアリバイ。死亡した部下は事件の当日、山歩きの疲れを理由として部屋からでてこなかった。鍵がかかった部屋の庭側から、部下の安否を確認したのが野木にともなった岸谷だった。野木の懐中電灯に照らしだされたガラス窓には、鍵がかかっているのがまざまざと浮かび上がった。

 野木に犯行の機会があるとすれば、風呂に入っていると主張している時間帯に、部下を部屋から誘い出して、つり橋から突き落とすしかない。

 「女性の勘」から野木犯人説をいいつのる岸谷に対して、湯川は物理学者として科学的に迫っていく。岸谷が想定する犯行時間帯では、ペンションからつり橋まで山道を往復するのは困難であることを、ストップウォッチを手に歩き、走って実証する。息を切らした岸谷が必死にそれを追う。野木が風呂に入っていた時間では、犯行が無理であることがわかる。

 湯川の謎解きは佳境に入って、なぜ死亡した女性の部屋の鍵がかかっていたように見えたのか。

重なり合う夏川・吉高の映像

 ストーリーの展開を追いながら、わたしは女優・夏川の過去の映像がフラッシュバックするのであった。それは、吉高の鮮烈な映像と重なり合う。

 初の主演映画となった「夜がまた来る」(1994年)は、奇才の監督・石井隆の作品である。夏川は殺された捜査官の夫の復讐を図るために、暴力団組織に入り込み、そのトップの情婦となる。そのことがばれると、薬物中毒にされて売買春のスナックに落とされるのである。

 凄惨な映像美で知られる石井の世界のなかで、夏川は全裸をさらして、その表情とからだ全体を使って迫真の演技をしている。

 この作品によって、夏川はこの年のヨコハマ映画祭の最優秀新人女優賞を受賞している。20歳代半ばのことであった。

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