ベテラン経済記者の眼

2013年5月31日

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 多くの企業にとって株主総会前の春から初夏にかけては人事の季節。各社のトップ人事が発表される中、悲喜こもごもの人生模様がいろいろなところで見られ、また語られていることだろう。

 再生にむけて立ち上がっている電機業界ではシャープのトップ人事が注目された。奥田隆司社長が一年で代表権のない会長に退き、片山幹雄会長も退任するという形となった。5月13日付の日本経済新聞夕刊のスクープだった。

社長交代の背景事情
各紙の「検証」は…

 東証1部上場の有名企業で、在任わずか一年で社長が交代するというのはきわめて異例で、その背景事情が注目された。新聞各社ともそれぞれの取材による「検証」記事を掲載していたが、多くは誰がリーダーなのかわからない「多頭経営」を断ち切るのがねらいだと解説されていた。

 読売新聞は5月14日付で「歴代トップの影響力が残るなか、奥田社長の求心力低下が著しくなり、このままでは経営再建が難しくなるとの判断が働いたため」とした。読売は「片山会長ら幹部が奥田社長に詰め寄った」と会長主導だったことを紹介している。毎日新聞も5月15日の朝刊で「片山会長は4月下旬、自身の辞任を伝えるとともに奥田社長に辞任を迫った」と伝えた。

日本証券新聞の「クーデター」説

 一方、5月27日の日本証券新聞は別の見方を紹介している。社長に昇格する高橋興三副社長の「クーデター」説だ。記事によると社長をさしおいて、代表権のない片山会長や町田勝彦相談役が台湾・鴻海グループや韓国・サムスンとの提携交渉を担い、3代前の社長だった辻晴雄特別相談役も経営に口を出すようになり、「船頭多くして船山に上る」の状態になった。「本来なら奥田社長がこれをいさめるべきだが、そうした動きはなく、そこで高橋副社長が決起し、今回の人事を行った-----、というのがもっぱらの見方」と報じた。

 いずれの記事も非常に興味深く、大阪を中心にシャープの担当記者や金融担当記者が熱心に取材を積み重ねた成果であることがよくわかる。一般の読者にとっても、液晶テレビ・アクオスで爆発的なヒットを飛ばしたにもかかわらず、ここ数年、あれよという間に業績が悪化したシャープの経営実態がどうだったのかよくわかる記事になっている。

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