経済の常識 VS 政策の非常識

2013年6月24日

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 ついでながら、これはアベノミクスの第1の矢、大胆な金融緩和の効果が大きい理由でもある。バブル以前、日本の失業率は2.5%であった(バブル期の終わりには2%にまで低下した)。これが日本の正常な失業率である。ところが、バブル崩壊後、5.5%にまで上昇した。現在は4%余りであるが、雇用調整助成金で無理やり下げている分があるので、実質的には5%であろう。大胆な金融緩和とは、デフレによって5%になってしまった失業率を元の2.5%にまで下げるという政策である。失業率が2.5ポイントも下がれば、それだけでGDPは大きく増えるだろう。これは雇用拡大をともなう政策が大きな効果を持つということである。

 ただし、ここで注目したいのは、単に経済効果だけではない。待機児童は都市の問題であるということだ。地方では子供は同居する祖父母が見てくれることが多く、待機児童は少ない。厚生労働省「保育所入所待機児童数」(12年10月)によれば、東京、大阪(府+市)、愛知(愛知+名古屋)の待機児童数がそれぞれ7257人、1268人、1181人であるのに対し、富山、石川、福井、山梨、長野などではゼロである。待機児童の数が過小に推計されているという批判はあるが、大都市で多く、地方では少ないという傾向に変化はないだろう。

 さらに政府は、大都市を対象にした特区も考えている。これまでの構造改革特別区域、特区とは、どぶろく作りや農家の民宿の規制を緩和するとか、地方を対象としたものが多かった。

 そもそも、自民党は田中角栄以来、都市の繁栄を地方に広げることを第一としてきた政党である。いわゆる「工業等制限法」で、東京圏と大阪圏に一定面積以上の工場と大学の新設・増設を制限していた(両法とも02年に廃止された)。東京や大阪に工場を建てさせず、地方に工場を建てさせるためである。ここで大学が入っているのも面白い。自民党にとって、大学も工場と同じだったらしい。

 これによって東京と大阪の発展が抑えられた。オフィス需要の増えた東京はまだよかったが、大阪は打撃を受け、1人当たり県民所得で製造業の盛んな愛知、さらには静岡にも後れを取ることになった。

 こういう自民党が、大阪を助けるのみならず、東京までも発展させないといけないと考えるようになったのは大転換である。もちろん、もはやアジアの中心は当然に東京ではありえない。上海かもしれないし、シンガポールかもしれないという状況になって、東京が沈めば日本も沈むと気が付いたのだろう。

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