オトナの教養 週末の一冊

2013年6月14日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――今、お話に出た環境クレジットファイナンスの基本的な考え方とは?

藤井氏:温暖化対策の場合、規制をかけてCO2の排出量を抑えます。その際、規制基準よりも排出量が少ない企業もありますし、逆に規制基準より排出量が多く新たな設備投資をして、排出削減をしなければいけない企業もあります。規制基準より少ない排出量の企業は、規制基準との差額部分を、排出量を追加削減をしなければならない企業に売ることができます。排出量の多い企業は、新たな設備投資よりも安い価格で差額分の排出量を買えば得するわけです。これをカーボンクレジットと言います。

 つまり、一定の規制があることでマーケットで取引できるカーボンクレジット商品が生まれる。このクレジットは通常の金融商品と同じようにビジネスができます。

 今はCO2を例に出しましたが、ヨーロッパでは廃棄物の埋立場同士で、余力のある埋立地がクレジットを発行したりする埋立地クレジット、オーストラリアの渇水地域では水の使用権を売買するウォータークレジットなどがあります。漁業権の売買も同様の取引(権利取引という)です。この場合、実際には漁業権を持つ所有者は、漁業をしなくても権利を売買することで利益を得ます。こうした例の一つが環境クレジットなのです。

――通常の金融商品と同じように取引されると。

藤井氏:そうです。為替や商品相場のトウモロコシや小豆などとまったく一緒です。違いは、規制から生み出されたという点と、現物がない点です。CO2の場合、現物は一般的に経済価値のない空気ですから、クレジットの価値は規制によって人為的につくりだすわけです。人為的とは、この場合、いわば「知恵」です。我々が住む地球環境をこれ以上悪くしないために、みんなの合意と知恵で対策をする。こうした合理的な規制と市場取引を官と民がつなげることで、温暖化のみならず様々な分野のクレジットを生み出し、環境問題の解決と新たなビジネス市場を創り出すことができます。

――本書ではヨーロッパの環境銀行の取り組みが紹介されています。かなり興味深い取り組みですね。

藤井氏:ヨーロッパの場合、各国に1~2つ環境銀行があります。いずれも、環境マーケットに特化した銀行なので規模は決して大きくはありません。本書ではオランダのトリオドス銀行を紹介しました。その資産規模は約6000億円で日本の信用組合の大手と遜色ないくらいです。

 オランダでは、一般消費者も、元々、環境への意識が高く、お金を運用するときに、同じ金利ならば、ラボバンクやINGと言ったグローバル企業ではなく、トリオドスという選択肢があります。トリオドスを始めとした環境銀行にお金を預ければ、それらの銀行は、預かった資金の大半を環境分野に投融資します。つまり、自分のお金の行き先がはっきり見え、金銭的リターンだけでなく、環境や社会的リターンも期待ができます。トリオドスはEU圏内でもドイツ、スペイン、イタリア、ベルギー、イギリスに進出し、アメリカでもベンチャー企業をつくっています。また有機農業へ資金を供給するグリーン・ファンドや風力発電事業へのファンドをつくり活動しています。

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