チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年6月18日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 5月24日、急きょ北京へと派遣された北朝鮮の金正恩総書記の特使・崔竜海が習近平国家主席と会談を行った。自ら軍の総政治局長という要職に在り同時に党の大幹部でもある崔が習近平と会った際、手渡されたのが1通の親書であった。

 いったい親書には何が書かれていたのか。世界の注目を集めた。その中身がここに来て少しずつ明らかにされ始めている。

朝鮮戦争停戦協定60周年の
記念式典にあわせた訪朝の要請

 朝鮮労働党の幹部と親しい日本の関係者が語る。

 「親書にかかれていたのは習近平氏への訪朝の要請です。日程も7月27日と指定されています。というのもこの日は、朝鮮戦争停戦協定60周年の記念式典が開かれますから、そこに是非参加してほしいとの内容だったのです。あくまで朝鮮側からの感触ですが、中国もこれには前向きだということです。もしこの訪朝が実現すれば朝鮮半島をめぐる情勢は一気に従来とは違った流れに向かうことでしょう」

 7月27日が朝鮮戦争停戦協定60周年であることは北朝鮮にとってはさらに深い意味があるともされる。

 「そもそも朝鮮側の狙いは米朝会談を実現して、現在の停戦協定から平和協定へとすることで、実際に改定を求める立場です。その改定が進められるとすれば、停戦協定の当事者である中国と朝鮮とアメリカの三者の間で進むことになります。つまり、この朝鮮戦争停戦協定60周年の式典が米朝交渉への大きな梃子となることを朝鮮が狙っているということです。この朝鮮の意図に対して、中国がどう反応するのか。朝鮮にすれば、中国もアジア平和の仕切り国として存在感を高めることができるという意味で十分にメリットがあると判断しているようです」(前出の朝鮮労働党の幹部と親しい日本の関係者)

 北朝鮮の核開発を話し合う6カ国協議がすでに形骸化していることは周知の事実だ。しかも北朝鮮はもはや「核」と「ミサイル」を手放す意思はなく、それを持ったまま米朝協議にこぎつけたいと考えているのだとすればこの記念式典に中国を巻き込んでいくことは1つの突破口になることは間違いない。

アジアにおける日本の影響力を押さえたい中国

 では、果たして中国はこの誘いに乗るのだろうか。

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