NHK未解決事件file.03「尼崎死体遺棄事件」
過去の犯歴を掘り起こした調査報道
語り部・作家高村薫の存在感


田部康喜 (たべ・こうき)  東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

田部康喜のTV読本

月刊WEDGEに2008年6月号まで約10年間、110回にわたって連載したコラム「読むテレビ」が、インフィニティで復活します。 コラムを読んでくださった方が、そのテレビ番組を見なくても番組について語れるようになる、というコンセプトは変わりません。大きな転換期にさしかかっているテレビ界。スマートフォンやスマートパッドの登場によって、映像コンテンツの価値はより高まっていると思います。ぜひご覧いただきたい番組をご紹介してまいります。掲載回数は月に2回で、第1・第3水曜日にアップ予定です。

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警察の捜査によると、少なくとも5つの家族が崩壊して、8人の死亡と3人の行方不明者が明らかになっている。その過程で家族の財産を奪っている。

 2011年秋に発覚し最近まで捜査が続いた「尼崎死体遺棄事件」である。

 主犯の角田美代子・元被告が自殺を遂げたために、事件の真相解明に闇がたちはだかっている。

ドキュメンタリーと再現ドラマ

 NHKスペシャルのシリーズ「未解決事件」は、file.03でこの事件に迫った。6月9日の放映と、その再放送の13日を観た。

 角田・元被告が標的とした、高松市の父母と姉妹の4人家族に焦点をあてるとともに、これまでの捜査で明らかになっていなかった、ふたつの家族の崩壊を調査報道によって、浮かび上がらせた。

 主犯の角田・元被告の知人や、事件を生きのびた被害者たち、亡くなった人々を助けようとした人々の証言をたんねんに重ね合わせて、真相に迫ろうとしている。取材対象は300人に及ぶ。こうした証言に基づいた、ノンフィクションの再現ドラマを番組の要所ではさみこむ。

 高松市の4人家族に、角田・元被告が入り込んだのは、この家族の妻の兄の借金問題である。肩代わりしたことを理由として、多数の男性たちと乗り込んで1階を占拠し、家族を2階に軟禁状態にする。さらに、家族を分断して、互いに暴力を振るわせて、加害者意識を植え付け、外部に通報できないようにする。家族は半年余りで、計2000万円もの財産を使い込まれた。

 姉妹の運命は分かれる。姉は何度も脱走を図ったうえに連れ戻され、角田・元被告の尼崎の自宅のマンションの物置小屋で監禁され、死亡する。姉の死亡にかかわったとして、妹は逮捕される。母親も不審な死を遂げている。

「家族で虐待をしていたので、
被害届を出すことはできなかった」

 取材班は3カ月間をかけて、生きのびた父親にたどりつき、インタビューに成功する。それとともに、この家族の周辺の取材を続けるなかで、被害が防げた可能性が浮かび上がる。

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「田部康喜のTV読本」

著者

田部康喜(たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

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