2024年4月19日(金)

医療を変える「現場の力」

2013年7月4日

 「20年間この町を出ていないんだよ」。

 「僕はとてもそんな生き方はできないと思いました。だから諦めるというのではなく、もっと違う、今だからできる形が何かあるだろうと思って試行錯誤してきました。それが、このクリニックで少しずつ作り上げてきた形です」。

 一人で開業している医師も、規模の大きなクリニックや訪問看護師と協力するなどのネットワークを構築することにより、現実的な形で24時間体制を敷くことができる。また、桜新町アーバンクリニックのように都市部に位置する場合であれば、地域とのネットワーク構築に加え、1つの診療所の医師数をある程度まで増やす方法もある。

 「今、何よりも心強いのは、休日夜間のオンコールをみんなで負担しあえるところですね。僕一人で始めた時は、365日夜中も全部コールを受けていたんです。2年ぐらい続きましたね。身体こそ壊さなかったですけれど、何をしていてもかかってくるのは、やっぱりきつかったですね。なぜか映画館で映画を見ている時に限って鳴るとか(笑)」

 「だんだん体制を整えてきて、今ではオンコール当番は1カ月に1回、1週間という形になっています」。

 さらに、病状が心配な方に関しては、日中に充分な対応をし、家族にも説明をしておくことで、夜間や休日の対応も軽減するという。

重要な多職種の役割

 在宅医療において、医療面と生活面の両方の視点を持った看護師の役割は大きい。桜新町アーバンクリニックの訪問診療や往診には、必ず同クリニックから看護師が同行している。そして、地域の訪問看護ステーションともつながっている。

 人工呼吸器をつけてどうやって外出するか、どのような体勢でいると楽に過ごすことができるか、栄養や口腔内の状態はどうかなど、看護師による医療的知識と生活者目線を持ち合わせたアドバイスは、在宅で療養する人とその家族が日々感じているちょっとした心配の穴を埋めてくれる。

 遠矢さんは次のように言う。「医師の補佐をしてほしいというのではなくて、僕らに足りないケアの視点で本人やご家族に関わってもらっています。医師が必要とされるのは、何かあったとき、医療的な判断や診断が必要な時です」。


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