世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月4日

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 FT紙副編集長のスティーブンスが、5月30日付同紙論説で、ユーロ圏を救済しようと取られた政策が各国の国民に苦痛を強いていることにより、ポピュリズムが広まり、欧州統合の基盤であるリベラルな秩序が壊れ、EUを破壊されるおそれがある、と警告しています。

 すなわち、緊縮財政の時は過ぎようとしている。OECDは先日「緊縮財政対成長」という会議を開催したが、これは間違った選択である。緊縮財政は政策であり、成長は目的である。

 ECが財政引き締めの手綱を緩めたのは、経済と政治の現実を認識したという歓迎すべき兆候である。今やユーロではなくEU、それとともに確立された政治秩序の威信が、生命維持装置のお世話になっている。

 EUの政策変更は、マスコミが表するほど劇的ではない。 名目の財政目標から、構造赤字に焦点が移っただけである。誰も、大規模で任意の景気刺激策を唱えているわけではない。

 緊縮財政政策は、いつかは徐々に緩めなくてはならない。ユーロ圏の周縁国の債務は大幅に減ってきている。国債のイールドの差(ドイツの国債と例えばギリシャやスペインの国債のイールド)も縮まっている。構造黒字を達成しそうな国もあるし、ほとんどが2014年にはプライマリー・バランスが均衡しそうである。イールドの差に一番苦しめられた国々の経常収支は大幅に改善している。

 ドイツも、僅かながら、EUの政策変更に許容的になっている。財政均衡第一の姿勢を変えることを恐れるドイツ人は必ずいるが、メルケル首相の側近たちは、財政赤字と同時に競争力に注目してきた。

 厳しい財政引き締めが多少緩和されたことで、構造改革のペースを上げる余地ができた。構造改革は、経済成長の可能性がそれなりにある時に投資や職の育成を図ることで、一番上手く機能する。職の可能性を奪われている若者が一世代に及ぶが、彼らに機会を与えることが最優先である。

 イタリアのレッタ新首相は、誰よりもポピュリズムの恐ろしさを知っている。グリッロ率いる五つ星運動(Five Star Movement)という、憤懣を抱く人々の心をくすぐる動きによって、イタリア政治が行き詰まり、レッタ政権は、その政治状況の中から生まれた右と左の政党による大連立政権だからである。レッタ首相は、有権者の憤懣を無視することはできないと述べ、来年の欧州選挙で最大の勝者が反欧州を掲げる右や左の政党になりかねないと警告する。

 イタリアにはグリッロがおり、フランスには国民戦線、英国には英国独立党、フィンランドには真のフィンランド人(政党)、そしてギリシャにはファシストがいる。これらの政党の共通点は、国内の様々な問題を外国人に押し付けることと、若者の失業を政治権力者への怒りに変える力である。

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