2024年4月24日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年7月18日

 両首脳は「新たな形」の米中協力関係を築き、北朝鮮の非核化へ連携することや、温室効果ガスの一種、フロン代替物質の製造、使用を減らす協力で合意した。

 首脳会談を受けて、米中政府が7月10、11日の両日、ワシントンで開いた閣僚級の「戦略・経済対話」では、米中首脳の意思疎通を図るためホットラインを開設することや、米中両軍の演習など大規模な活動について、相互に通知する制度づくりを目指すことで合意した。

太平洋分割論を想起させる習主席の発言

 言うまでもなく、米中両国はともに国連安全保障理事会の常任理事国であり、世界第1、第2の経済大国。米国は世界最強の軍事大国であり、中国も経済発展の中で軍事力を着々と強化している。この米中二大国の関係強化がアジアを含む世界の平和と安定に貢献するよう望みたい。

 ただ、気になるのは「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」という習主席の米中首脳会談での発言だ。習氏は2012年2月、国家副主席として訪米した際のバイデン副大統領、今年4月に訪中したケリー米国務長官との会談でも同様の発言をくり返している。

 環太平洋地域には、米中両国のほか、日本、フィリピン、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ロシアや島しょ国など大小さまざまな国々がある。米中両国だけで“なわばり”を壟断してはならないし、できないだろう。

 2007年5月、中国海軍高官が初訪中した米太平洋軍のキーティング司令官(海軍大将)に対し、太平洋を分割して米国がハワイ以東を、中国が同以西の海域を管理してはどうか、ともちかけた。(司令官は翌08年3月の上院軍事委員会公聴会で、この事実を明らかにした)習主席の発言は、海軍高官の太平洋分割論を想起させる。

 筆者は米中首脳会談前に中国外交官と懇談した際、ケリー長官との会談での習主席発言について「日本人として不愉快だし、中国にとっても不利だからやめた方がよい」と率直に提言した。この外交官は「数年前にG2(米中二大国)時代が喧伝された時も中国は否定した。米中だけで太平洋を支配しようなどという考えは毛頭ない」と釈明したが、習主席はまたも発言をくり返した。

米国と対等にわたり合うことが
「中国の夢」を象徴する成果

 その含意は「中国は太平洋での海洋プレゼンスを拡大したい。米国はこれまでのような封じ込めをやめよ」ということだろう。「米国」とは同盟国の日本や韓国、台湾、オーストラリア、フィリピンなどを含む米国陣営全体を指すと考えるのが自然だ。

 中国には韓国、日本、沖縄、台湾、フィリピンと続く第一列島線を突破して、勢力範囲を太平洋に広げたいという野心がある。


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