2024年4月25日(木)

うつ病蔓延時代への処方箋

2013年7月25日

 アメリカのクリニックに勤務していたとき、身体表現性障害で来院する人は、日本人と韓国、台湾などアジア系が多かった。落ち込んでいる状態を素直に表現できないからではと思います。それに比べアメリカ人の場合は、うつを含めメンタルでの悩みを自分の中に閉じ込めずに、実にオープンに話します。

 日本のサラリーマンは、精神科医にかかっていることは隠したがりますが、アメリカでは逆です。誰もが精神的な不安を抱えるのが当たり前という前提があるからでしょう。どのような薬を飲んでいるのかは、普通に話し合いますし、自分を知ってくれるセラピストがいることを自慢するかのように語ります。セラピストをもつことは、それだけ精神的ケアをしている証拠としてみられるので、これが社会的なステイタスとさえなっています。日本とは天と地の違いともいえるのではないでしょうか。

自殺願望があれば、直ぐに入院措置

 ――うつ病にも関連しますが、自殺率はアメリカよりも日本の方が高いと聞いています。自殺予防などの違いでしょうか。

市川:よく会話していて「もう死にたい!」という人がいます。私の経験では日本人や韓国人に多い傾向です。そのような言葉をアメリカで言えば、すぐに72時間の強制入院をさせられます。このように日本とは違い自殺リスクがある人への対応は大きく異なります。

 州によって制度は異なるのですが、医師や一定の資格を有した看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士など2人が立ち会い、自殺リスクが非常に高く深刻と判断した場合は、強制的に入院措置をとります。カウンセリングでも自殺リスクの気配があれば、資格者を呼ばなければいけない義務があります。どの町にもチームがいてクリニックでも家にでもすぐに来てくれます。

 電話カウンセリングで危ないと思えば、すぐにチームに知らせるとどこへでも行ってくれる。自殺リスクが高まった時に72時間の入院措置をとることで自殺を防いでいます。成人していれば、入院は家族の同意など不要です。自殺予防は徹底していますので、率では日本の半分ぐらいです。

 昨年、日本の自殺者数が3万人を割り込みました。自殺対策の効果が出たのか要因は分かりませんが、私は東日本大震災の影響が少なからずあると思います。必死に頑張っている被災者の姿をみて、思いとどまる人が増えたのではないかと推測しています。


新着記事

»もっと見る