2024年4月25日(木)

解体 ロシア外交

2013年7月29日

 たとえば、S-300問題がある。S-300とは、ソ連が開発した高性能な長距離地対空ミサイル・システムであり、同時多目標交戦や弾道を描く標的を破壊する能力も持つ。現在、ロシア連邦軍が使用しているミサイル・システムであり(ちなみに、5月末には、ロシア側は否定しているものの、S-300をシリアに供与したという報道も出ている)、米国のパトリオットに相当するものだ。

 そして、2007年12月に、ロシアからイランへのS-300ミサイル・システムなど約40億ドルの武器供給契約が結ばれていたが、2010年6月9日に採択されたイランに対する合計4度目の制裁決議である「安保理決議1929号に」基づき、ロシア側がこの契約を破棄したため、両国間で確執となっていた。同決議では、ミサイル、ミサイル・システム、戦車、急襲用ヘリコプター、戦闘機、船を含む通常兵器の対イラン供給制限が初めて導入された。なお、ロシア側は、S-300の供給を予定した契約は数年を見込んだものであり、ロシアの履行は「一時停止」されただけと主張している。

 だが、イラン国防省は2011年4月13日に、本件で、武器輸出企業「ロスオボロンエクスポルト」社をジュネーブの国際仲裁裁判所に契約不履行で提訴し、賠償金として40億ドルを要求した。

 ロシア内外の専門家らの評価では、この訴訟が認められる可能性は皆無だとされていたが、イラン側は認められる可能性が高いと自信を持っていたようである。ともあれ、ロシアは武器輸出部門でのロシアの国際的信用を維持するためにも、裁判以外の方法での和解を模索したとみられる。

 そして、6月末には、ロシア政府がイランとの和解のため、「代替案」を提示しているということが報じられた。その代替案とは、S-300 の代わりに「Anty-2500」ミサイル・システムを供与するというものだ。ロシア側は、Anty-2500はS-300よりかなり洗練されたミサイル・システムだと主張しているようである(なお、以前にロシア側はS-300の代わりにTOR-Mミサイル・システムを供給するという提案をしていたが、イラン側が応じなかった)。

 ロシアの代替案で両国が合意した場合、イランの提訴は取り下げられ、ロシアは軍事ビジネスでの国際的信用を維持できるだけでなく、売却益も得られることから、ロシアにとっては望ましい展開であることは間違いない。なお、本代替案については、イランが合意する可能性は「ある」とみられている。

合同軍事演習も実施されず

 他方、イランとロシアの合同軍事演習の計画も報じられていた。中国も交えた3国の合同軍事演習の可能性も報じられていたが、その線は実現可能性が薄そうだ。だが、イランとロシアの海軍合同軍事演習はかなり具体的に計画が進んでいた。


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