田部康喜のTV読本

2013年8月21日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 洋平と食事をしたり、娘と住む部屋に料理を作りに行ったりするうちに、由巳と洋平の間にはほのかな愛情が芽生える。

 カレンダーの自分の死ぬ日に印をつけて、一日一日を夫と娘のために生きようとする裕美と、その運命を変えようとする由巳が時空を超えて交信するようにして、感情を通わせていく。

 ふたりのユミの哀しみと愛しみの美しい表情を、カメラは緊迫感のなかでとらえる。

 謎の人物である龍野がふたりに迫る。そして、友近演じる郁子は、洋平に由巳を紹介したばかりか、妻である裕美も紹介していた事実が浮かび上がる。さらに、洋平が結婚する以前に付き合っていた女性も事故で死を遂げている。

 郁子と洋平の関係とは。郁子が隠している秘密とはなんなのであろうか。

時空ドラマの新しい領域を切り開く

 これまでの時空ドラマは、タイムマシーンに乗ったり、異なる時空につながる空間の揺らめきを通過したりして、主人公が過去と未来、そして現在を行き来する物語が多かったように思う。いわゆるタイムスリップである。

 タイムスリップ・ドラマには「時間のパラドックス(矛盾)」の問題が絡み合うこともまた多い。まず、現在は変わらない。つまり過去にさかのぼって行っても、時間の連鎖のなかで、いまの事実は変わらないのではないか。次に、現在の自分自身が過去や未来にいって、自分にであったときになにが起きるか。ひとつの空間に同一人物がふたり存在することはできないのではないか。

 「ダブルトーン」は、時空を超えたところに存在するふたりの女性が夢によってつながって、それぞれの現在を体験する。ふたりが情報を交信するなかで、果たして過去と現在は変わるのか。ドラマの設定とその結末は、時空ドラマの新しい領域を切り開くものであった。

原作はSF作家・梶尾真治

 ふたりの美しいヒロインと緊迫したサスペンスの醍醐味に魅かれて、梶尾真治の同名の原作を購入して読んだ。梶尾の作品を手に取るのは初めてのことである。

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