経済の常識 VS 政策の非常識

2013年8月16日

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 「2013年は日本企業による海外M&Aの動きが小康状態となっている。1─6月期の日本企業による海外M&Aは151億ドル(約1.4兆円)と、09年下期以来の低水準となった」と報道されている(ロイター7月11日付「コラム:アベノミクスでしぼむ日本企業の海外M&A」)。その理由として、「アベノミクスによる円安誘導や不安定なマーケットがその一因と見られる」という。

円高だから海外の企業を買って良いわけではない

 しかし、海外の企業の価値はその国の通貨で決まる。単純化するために、ドルで決まると言っても良いとしよう。すると、円高になればドルの価値が下がって買いやすくなるというのだが、同時に円建てでのその企業の価値も下がるのだから、出しても良い円建てでの金額も下がるはずだ。

 純利益1億ドルのアメリカ企業の利益は、1ドル120円の時、円建てで120億円だが、1ドル80円の円高になれば円建てでの利益は80億円になる。円高で買いやすくなったと高い値段を提示すれば大損となるのではないだろうか。

 日本企業が海外企業を買収するのは良いことだと思っている人が多いようだが、国内で投資先がなくて海外企業を買うより、投資先のあるような日本にすることの方が大事ではないか。いくら努力しても人口が減少し、賃金の高い日本では成長できないから海外に投資するのだというのは分かるが、国内で投資せず、海外で投資するのは、雇用を海外に流出していることになる。

 また、海外に投資しても成功していないのなら、日本に還流すべき収益も失っていることになる。安倍内閣の成長戦略でも、国内の生産を示すGDPより海外からの純収益を含むGNIを重視しているのは、GNIを高めたいと考えているからだろう。そうであれば、わざわざ海外に投資することを奨励したり、賞賛したりする必要はないのではないか。

海外M&Aが増えたのはリーマンショックの後

 そもそも、日本の海外M&Aは成功しているのだろうか。その前に、日本はどのくらい海外M&Aをしてきたのだろうか。先述の報道のように、海外M&Aが小康状態になっているということは、その前に巨額のM&Aがあったということだ。

 バブルの時、ずいぶんと気前よく海外の企業をたくさん買ったものだと思っている人が多いだろう。ハリウッドの映画会社、ビル、ホテル、マンション、ゴルフ場、ワイナリー、城、牧場、絵画、なんでも買った。全部がM&Aになる訳ではないが、金額の張るものはたいてい会社を買うことになるのでM&Aになる。

 ところが、M&A助言会社のレコフによると、バブルのころのM&Aは年に3~4兆円くらいで、本当に金額が増えたのはリーマンショックの後と東日本大震災の後だ。リーマンショックの後に増えたのは、アメリカの金融機関を買収したからだ。東日本大震災の後は、電力不足といつ何があるか分からないからということで海外進出を加速したからだ。

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