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日本酒ブームなのに酒米・山田錦が足りない
農政の謎、ここに極まれり

Wedge編集部

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 山田錦は、最高級の酒造好適米としてランクされる。その生産の多くが山田錦を生み出した兵庫県で行われている。山田錦が誕生したのは昭和11年に遡るといわれる。兵庫県の農業技術者が苦心の末、作り上げた。生産地としては六甲山の裏側にあたる加東市から三木市の、いわゆる北播地域が中心となっている。

なぜ主食米と酒米は同じ扱いなのか?

加東市の農家の皆さん (撮影:編集部)

 山田錦を生産する加東市の農家によれば「一般的に酒造好適米というのは食べても美味しくありません。特に冷めてしまうと味が落ちる。それでも、子どもの頃はこれがご飯だと思って食べていましたよ」という。日本酒の需要が多かった頃、山田錦の生産地域では、主食用米の生産を抑えてまで山田錦を生産していた。

 その後、80年代後半のバブル期をピークに山田錦の生産量も価格も落ち込んだ。20年以上も続いた減少傾向が12年、久しぶりに増加に転じた。日本酒全体の出荷量は減り続けているものの、醸造アルコールを添加しないコメだけで造る、純米酒や純米吟醸酒(精米歩合60%以下)の増加や輸出の伸びがもたらした結果だ。

 しかし、これ以上の増産となると難しい。というのも、山田錦をはじめとした酒造好適米は、主食用米と同じく「生産数量目標」の内数となっているからだ。要するに生産数量に制限がかけられているのである。主食用米の“価格維持”のため、需要見通しをもとに生産数量目標を決めるという国策だ。

 建前上、生産数量目標を守るかどうかは農家に任せられているが、地域の中で国の政策に反することは容易ではない。しかも、生産数量目標を守れば交付金がもらえる。

原料米取引のパターン
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 ここで疑問となるのは、主食用米の“価格維持”を図るために行われている「生産数量目標」の中に、なぜ主食用には適さない酒造好適米が含まれているのかということである。加東市において、山田錦を生産する農家の人たちも「生産数量目標の対象から外れるのであれば、生産量を増やす余力はある」と口を揃える。

 酒造好適米が生産数量目標の内数となっている理由の一つとして「酒造好適米を生産していない農家への影響」(農林水産省穀物課)がある。生産数量目標は、主食用米と酒造好適米の合計で決められている。もし、酒造好適米が外数になれば生産数量目標の枠は、その分だけ少なくなる。そのため、酒造好適米を生産していない農家には不公平になるということだ。

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