世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月23日

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 米外交評議会(CFR)のリチャード・ハース会長が、8月30日付フィナンシャル・タイムズ紙において、英国議会が対シリア軍事行動を支持する動議を否決したことについて、英国が米国から疎遠になる危険があり、米国の外交政策にとって大西洋同盟の地位の低下を示し、英国と欧州は内向きになるであろう、と指摘しています。

 すなわち、化学兵器を市民に対して大規模に用いたと見られるシリアへの軍事行動に英国が参加することを支持する動議を、英下院が否決したことには、呆然とさせられる。

 英国議会の表決は、イラクで大量破壊兵器が結局見つからなかった経験から来る、懐疑主義、あるいは、シニシズムが長引いている結果であるように見える。しかし、ある行動を支持する前にインテリジェンスが完璧であることを求めるのは、結局、何もしないことを支持することに繋がるので、それは不幸なことである。今回のようなケースでは、大きな代価を伴うことになる。

 表決は、常に存在している反米主義も反映している。かつて、ゲーツ前国防長官は、「欧州では、一般大衆と政治家が、軍事力とそれに伴うリスクを嫌っており、欧州は非軍事化されている」と表現したことがある。

 しかし、シリアへの軍事介入に対しては、英国の表決はそれほど大きな影響を与えないであろう。化学兵器の使用には罰が与えられなければならず、化学兵器の脅威は取り除かれなければならないという規範を支持するためにオバマ政権が行動することを、英国の決定が止めることにはならないであろう。また、シリアの目標に対して用いられる能力の大部分を米国が担うはずであるから、表決は軍事的にもあまり大きな影響を与えることはないであろう。

 しかし、英国の決定は、もっと広範な影響をもたらすであろう。これは、英国の、世界、とりわけワシントンにおける影響力が失われる以上の結果となろう。「特別な関係」という表現は、ある種の嘲笑を受けるであろう。英国は、EUからも米国からも離れてしまう危険があり、それは、独自の選択肢をほとんど持たずに世界的な役割を果たしたいと考えている中規模国家にとって、望ましくない状態である。

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