2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月27日

 尖閣をめぐる問題はASEAN関係者が思う以上に深刻で、このまま日中の緊張が続けば、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の進展が遅れる可能性がある。また、竹島問題を抱える韓国は、中国に傾きつつある。これらの国々の間で領土問題が主要なニュースになっているうちは、ASEAN+3協力が進む余地はない。

 昨年の外交的な失敗の後、中国とASEANの関係は改善しつつある。中国外交にとっても、ASEAN政策は最優先事項であり、中国の指導者はこの半年に3回もASEANを訪問しているし、7月には南シナ海行動規範の締結に向けて議論していくことに合意した。

 しかし、この道のりはまだまだ不確実である。ASEANの対中認識は必ずしも一枚岩ではなく、中国もASEAN内の友好国とそうでない国とを選別するようになっている。

 このような中で、ASEANが日中の狭間でうまく立ち回るための最善のオプションは、ASEAN諸国が可能な限り一体性を維持することである。

 ASEAN諸国は、ASEAN憲章にあるようにコミットメントと責任を共有する必要がある。この原則を守れなければ、ASEANはバーゲニング・パワーを失い、地域の平和にもダメージを与えてしまうだろう、と述べています。

* * *

 上記論説の筆者カウィは、20年程前には、タイの大手紙The Nation の新進気鋭の記者でしたが、最近は言論界の重鎮となっているようです。

 この論説は、ASEAN全体の立場というよりも、現在のタイの立場を述べ、タイと同じ方向にASEANがまとまるべきだと、主張している論説と言えるでしょう。

 しかし、ASEAN全体を一つの方向にまとめるということ自体、言うべくして、実行は難しいことです。ASEANはいわゆるASEAN Way の下に、各国の自由な行動を束縛しないということでまとまっている共同体であり、一つの方向、すなわち日中対立における中立的立場に全体をまとめること自体、そもそも無理であると思います。

 ただ、カウィの主張が、現在のタクシン派UDDのインラック政権がとっている方向に沿っているということは言えます。


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