Wedge REPORT

2013年9月26日

»著者プロフィール
著者
閉じる

兵頭慎治 (ひょうどう・しんじ)

防衛研究所米欧ロシア研究室長

1992年上智大学外国語学部ロシア語学科卒業、94年同大学大学院国際関係論専攻博士前期課程修了。在ロシア日本大使館政務担当専門調査員、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理)付内閣参事官補佐、青山学院大学大学院講師等を経て、2011年より現職。

日本の北極関与支持
ロシアの思惑

 将来的な中国による北極海への軍事プレゼンスの拡大が、現実味を帯びてきたとロシアは認識している。12年9月の首脳会談では、アジア・太平洋地域の戦略環境の変化を踏まえて、北極海などの「海をめぐる協力」を具体化する方針が確認されたほか、10月にはプーチン最側近のパトルシェフ安全保障会議書記が来日し、日本外務省とロシア安保会議事務局との関係強化に関する覚書が署名された。国家安全保障会議(日本版NSC)が発足すれば、首相官邸とクレムリンの直接的なパイプも生まれるであろう。

 本年6月17日の日露首脳会談では、プーチン大統領が5月に承認された北極評議会(AC)への日本のオブザーバー入りをロシアが支持したことを明らかにし、5月末に公表されたオホーツク海北部における日露共同資源開発を評価する旨述べた。

ウラジオストク沖で行われた中露軍事演習に参加するため日本海を航行する中国人民解放軍艦艇 (提供:AP/アフロ)

 ACのオブザーバー資格は、日本の他に、中国、インド、イタリア、韓国、シンガポールの計6カ国に与えられたが、もともと中国の参加に否定的であったロシアが、オブザーバー入りを積極的に支持したのはインドと日本だけであった。また、オホーツク海での共同資源開発が実現すれば、日本のタンカーが頻繁に出入りすることになり、シーレーン確保の観点から、海上自衛隊と太平洋艦隊が日本海で実施する捜索・救助訓練がオホーツク海に拡大することも予想される。ロシアの影響圏である北極海やオホーツク海への中国進出を懸念して、両海域での日露協力を期待しているとも受け止められる。

 それでも、平和条約がなく、領土問題を抱えるロシアとの安保協力には、自ずと限界がある。日露間の防衛交流は進展しているものの、本年8月に繰り返された領空侵犯や北方領土の軍近代化などの懸念事項も残されており、冷戦時代から続く安全保障上の不信感も払拭されていない。

 しかし、従来の経済・資源協力に加えて、安保協力という新境地が開拓され、日露関係の裾野が拡大する意義は大きい。領土交渉を進める上でも、交渉の土俵が広がるとともに、新たなレバレッジの誕生も期待される。ただし、現時点では、日露間の安保協力は政治的思惑が先行しており、実質的な軍事協力が実現するまでには多くの課題も残されている。

 「2プラス2」の開始を契機として、中国ファクターも見据えながら、北極や極東地域において、日露間の安保協力の実効性をどこまで高めていくべきか、本格的な議論を開始すべき時期を迎えたと言えよう。

◆WEDGE2013年10月号より










 

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

関連記事

新着記事

»もっと見る