2024年4月20日(土)

佐藤忠男の映画人国記

2013年10月17日

『バッテリー 特別版』
価格 ¥3,990(税込)
発売元・販売元  株式会社KADOKAWA

 昭和になると東野英治郎(1907-94年)の存在が大きい。生まれは群馬県富岡だが、実家は近江商人の家系で、本宅は滋賀県蒲生郡東桜谷村(現日野町)であるという。明治の生まれだが、昭和のはじめ、明治大学に在学中に左翼運動に加わる。そして劇団築地小劇場のプロレタリア演劇研究所に入って新劇俳優の道を進む。戦前の新劇の舞台の代表的な演技には、「綴方教室」の父親役や「土」の主役がある。戦争中から映画にも出るようになり、当時の映画俳優にはなかなか出来なかったリアリズム演技で注目された。

 戦争末期に千田是也や小沢栄太郎などと劇団俳優座を創立する。これが戦後には劇団民芸や文学座と並んで新劇の3大劇団のひとつとなって、舞台に映画に大活躍することになる。主として脇役であるが、小津安二郎の映画「東京物語」(1953年)や「秋刀魚の味」(1962年)などでのユーモアとペーソスのあふれる名演技は不滅のものだ。テレビでは長期シリーズの「水戸黄門」で黄門様を演じたのが、多くの視聴者の記憶に残っているだろう。あの、心から楽しそうに「カッ、カッ、カッ……」と笑う、おおらかな味わいは誰にも真似られない。

 現代の若手の俳優には林遣都がいる。大津市の生まれである。2007年の「バッテリー」の主役のピッチャー役でデビューして、青春スターの道を一途に進んでいる。  (次回は和歌山県)

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