2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月1日

 本来、経済関係と言うのは双方に利益があるから存在するのであって、一方だけが得をするのならば成立しません。豪州にとって中国は最大のマーケットでしょうが、中国にとって豪州は必要不可欠な資源供給源です。その断絶の惧れが、戦争抑止の理由となるのならば、それは相互に働くはずです。豪州が中国を敵と出来ないように、中国も容易に豪州を敵とは出来ないはずです。豪州が毅然たる態度をとれば、それは戦争抑止要因ともなり得るはずです。

 ここで必要なことは、この種の議論が豪州で今後どのくらい力を得るかの情勢見通しであり、また、実際に米中が衝突した場合、豪州が経済的利益のために中立的立場をとる可能性についての情勢見通しです。

 要は、経済は最終的には決定的な要因とはならないということです。

 ノーマン・エンジェルは、第一次大戦前に、欧州諸国間、特に英独間の経済依存度がここまで大きくなった以上、欧州では戦争はあり得ないと予測しました。しかし、戦争勃発時のカイザーなど欧州諸国指導者の頭の中には、経済相互依存度などの考えは無かったと思われます。いざとなれば政治は経済に優先します。

 尖閣諸島の例はあまり適当な例ではないでしょう。尖閣諸島が原因で米中戦争に至るシナリオは想定しにくいものです。まして、米国が豪州の参戦を求める可能性はほとんどありません。

 ただ、本当に米中が衝突して戦争になった場合、豪中の経済依存とは無関係に、豪州は米国側につかざるを得ないだろうと予想します。

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