世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月4日

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 豪州のアボット新首相の、同盟優先、民主主義の価値重視、国防費増額方針といった保守的な外交安保政策は、批判者たちが考えているよりも成功する見込みが大きいが、インドネシアとの関係、ASEAN主導の多国間外交に慣れること、といった課題もある、とシドニー大学のジョン・リーが、9月5日付ウォールストリート・ジャーナル紙で指摘しています。

 すなわち、アボットの外交政策については、楽観視できる十分な根拠がある。アボットは、師であるジョン・ハワード元首相と同じ、保守的な原理に従うことを約束している。そのことで、中道左派の一部からは時代遅れであるとの批判を招いているが、現実は、ここ数年間、アボットの外交政策の方針を形作る保守的な原理がより当てはまる方向に動いている。

 アボットのアジア政策が、批判者が考えているよりも上手く行くと思われる多くの理由がある。第一に、アジアの多くの国が、地域におけるワシントンの戦略的役割の重要性について、アボットの考え方と一致しており、中国の自己主張を掣肘する如何なる地域的な努力も米国のパワー無しでは成功し得ない、という認識を持つに至っている。

 こうした同盟重視は、豪州の政策エリートの間で普遍的に共有されているわけではなく、中国を刺激することへの懸念や、より独立的で創造的なミドルパワーの役割を果たすためには同盟から距離を置くべきだとの考えも強い。しかし、アボットは、地域における豪州の影響力は米国との同盟ゆえに大きく高められる、という見方を取る。米国は、地域に十分に関与できるためには、軍事的リソースを受け入れてくれる同盟国やパートナー国を必要としているので、アボットの「同盟第一」のアプローチは、地域の多くの国から歓迎されるであろう。

 第二に、価値観は国益と分離できないというアボットの見方である。例えば、2012年にアボットは北京で、中国の政治改革の必要性に言及した。これに対して、豪州では、最大の貿易相手国に対する配慮に欠ける発言であるとの批判が高まったが、アボットの発言は、地域が中国に対して望むことと一致しており、アジア太平洋の他の民主国と良好な関係を築くことに繋がるであろう。

 第三に、アボットは、ギラード政権の下で、豪州の国防支出が1938年以来最低のGDP比1.59%になったことを、公に批判している。アボットは、GDP比2%まで国防費を増額するタイムテーブルを設定してはいないが、国防費を将来のあらゆる予算カットから守ると誓約している。豪州は、戦略的および軍事的衰退をとめることができなければ、地域における威信と影響力を失うことになるであろう。

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