ルポ・少年院の子どもたち

「囲い」のない児童自立支援施設 子供たちを「環境に負けない人間」に育てる(後篇)
茨城学園の挑戦

大元よしき (たいげん・よしき)  ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

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 「全国の児童自立支援施設の中で、これほど大勢が高校受験に合格している施設は他にありません。学習の成果は確実に上がっています。でも問題はその先にあって、高校で卒業までこぎ着けるかどうか……」

 鈴木と茂木は同時に落胆の色を見せた。

環境に負けない人間作りを

 結論から言うと、卒業生が高校に進学しても卒業する割合は20%以下なのだそうだ。規則正しい生活が出来るようになっても、学習成果があがっても、卒業後に元の家庭に戻り、元の仲間たちと過ごすうちに本人までもが元に戻ってしまうケースが多いという。最初の難関は高校1年生の夏休みが越えられるかどうか、その次が2年生の夏休みである。

 「卒業式ではみんなすごく感激して出て行くんです。我々もそんな姿を見て「これならもう大丈夫だ」と送り出すんですが、場合によっては1週間もしないうちに高校を辞めてしまう子がいます。最後まで頑張って卒業するのは17~18%というところでしょう。でも私たちにはこの卒業していく子たちがいるんです。この子たちは環境に負けずに生きているんです。この17~18%の子たちのように周囲に流されない、環境に負けない、言い訳しない人間作りをしていかなくてはいけません」(茂木)

 ただ、高校を中退していても20歳台半ばになって、もう1度学び直そうと定時制高校に通ったり、通信制の高校で卒業資格を取る卒業生がいることも確かだ。また、母子家庭で育った卒業生から「私にはお父さんがいないから、結婚式に私と一緒にバージンロードを歩いて」という嬉しいお願いもあったと茂木は振り返る。

 「20歳までは山あり谷ありですが『先生、高校卒業したよ』とか『○○で働いています』と学園を訪れ近況を報告しに来る子たちがいます。そこまでくればもう大丈夫。あとは大人と大人の付き合いになってきます」

 最後に……

 「親を捨てさせる教育も時には必要です。それは親が子供の収入に期待して、子供を食い物にするようなケースです」

 「子供が就職して働くようになると突然現れて、一生懸命働いて貯めていたお金を取られてしまうことがあるんです。児童養護施設で育った子たちは「今度こそ」という思いでその親を信じてお金をあげてしまう。非虐待の子ほど親を求めますからね。でも親はそのお金を持ったまま、またどこかへ行ってしまうんです」

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「ルポ・少年院の子どもたち」

著者

大元よしき(たいげん・よしき)

ライター

1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

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