みずほ銀行 暴力団融資問題
メディアも理解に苦しむお粗末な対応

変われない銀行の実態


段木昇一 (だんき・しょういち)  経済ジャーナリスト

某大手メディアのベテラン経済ジャーナリスト。夜討ち朝駆けも長年こなしてきたが、最近は経済報道のあり方についても考えを巡らす。

ベテラン経済記者の眼

新聞、テレビ記者の醍醐味は何といってもスクープ争いだ。「抜いた」「抜かれた」を日々競い合い、これぞというニュースを打ってくる。同じニュースでも新聞社やテレビ各社で出す時期や書き方が異なるのはそのためだ。折々に話題になる話題の経済ニュースを題材に、各社の報道内容を読み比べ、各メディアに潜む独特の作法と競争を解き明かす。 

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優秀な人材が集まっているはずのメガバンクがいったい何をやっているのだろうか。みずほ銀行の暴力団融資をめぐる一連の醜態をみて、こうした思いにとらわれた人も多かったことだろう。

過去に例を見ないお粗末な対応

 暴力団融資を2年以上も放置したうえに、金融庁にも虚偽の報告を行っていた今回のみずほ銀行の不祥事の対応は、長年経済取材をしてきた筆者にも理解に苦しむものばかりで、過去に例のないお粗末な対応だった。9月27日に金融庁から業務改善命令を受けたにもかかわらず、すぐに記者会見を開かず、広報担当者が記者に説明をしただけで放置した。

 そもそも金融庁の業務改善命令を受けたのに対外的に何の説明もしないというのは非常におかしな話だった。その週末に、頭取が一部の記者だけに謝罪するというやり方も中途半端で、理解に苦しむものだった。その後、副頭取が会見したがここでも担当役員は把握していたものの、経営トップにまでは報告していなかったという説明に終始した。

 そして10月8日になって初めて佐藤康博頭取が記者会見し、それまでの説明を一転させ、取締役会で暴力団への融資実態を記した資料が配付されていたことや、元頭取が把握していたことを説明した。実態を把握しながら金融庁などに正しい報告をしておらず、結果組織ぐるみで隠蔽したと疑われても仕方のない状況だ。本当にそうなら、半沢直樹のドラマを上回る悪質性だといえる。

日経  初報の小さな扱いからスクープへ

 そもそも反社会勢力への融資ということで金融庁から処分を受けているのに、どうしてすぐに記者会見を開いて説明するという発想にならないのだろうか。少なくともまともなメディアにとっては、みずほがいまだに反社会勢力に関わっていたということだけで大ニュースだ。実際に朝日新聞や読売新聞は9月28日付の朝刊の1面トップで報じ、経済面などでも詳報を展開した。みずほは預金者も多く、社会的な関心も高い。ニュースとしては大きく扱ってしかるべきだからだ。そういう点ではこの日の日経新聞の初報は中面に小さく掲載されただけだった。みずほに遠慮したのか、ニュースの価値判断を間違ったのか、事情は定かではないがこれには違和感があった。

 みずほがなかなか記者会見を開かず、真相を説明しようとしない中で、取材の中でみずほが金融庁に提出する業務改善報告に盛り込む内容などが先行して伝わってきたのが今回の特徴だった。一部メディアはそうした内容を報道していたが、順序が逆という感じは否めなかった。そもそも暴力団融資の真相についてみずほ側の正式な説明がなく事実関係が不明な段階で、みずほの「反省の内容」だけが伝わってくるのはやはり筋が違う。そこに矛盾を感じたメディアは批判を強め、みずほは追い込まれてゆく。

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段木昇一(だんき・しょういち)

経済ジャーナリスト

某大手メディアのベテラン経済ジャーナリスト。夜討ち朝駆けも長年こなしてきたが、最近は経済報道のあり方についても考えを巡らす。

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