2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2013年10月28日

原子力問題の総合的解決の提案

 これらの諸問題を総合的に解決する政策パッケージを提案したい。そしてそれを構成する関連法改正事項や新規措置を束ね、「原子力事業環境整備法案」のような形で結実させて、原子力に対する国としてのコミットメントを政治的・行政的に再確認することが重要だ。

 さらに原子力は大きな固定資産投資を必要とすることから、長期的な視点に立った計画に基づいて政策を進めていかなければならず、その策定主体が政府部内に存在していなければならない。現行制度の下ではそれは原子力委員会の役割だが、今後同委員会が縮減の方向で検討されるのであれば、同委員会に代わる行政責任組織を構築することが必要だ。

 提案する政策パッケージを一つの図にまとめると図2の通りである(東京電力の取扱いは別途検討が必要であり、図の東電関連部分記載は問題の構図上の位置づけを表しているにすぎないことに注意。また本稿では紙幅の関係上、触れられていない部分もある)。

 第一の要素は、民間主導で高経年炉のリプレース(新設を含む)を進めることだ。原子力技術を維持保有していくためには、技術の継承を確実に行うための人材育成が必要になる。また、原子力発電所の建設現場で実際に建設作業に携わることによって得られるノウハウや知識は、今後国内の原子力発電所における安全性向上に繋げていくために必須だ。原子力の国際事業展開も、技術の切磋琢磨の観点から積極的に推進すべきである。

 商業炉である限り、リプレースは民間資金によるべきだ。しかし、一方で自由化が進む場合、資金調達は困難化することは右に見たとおりである。電力会社が原子力を自らの経営構造の中でどう位置づけ、どの程度の投資を、どういう資金調達で行っていくのかを経営判断しなければならない。

 その判断を可能にするため、原子力は国策として「公益電源」として政策支援の対象にするか、あるいは、火力発電などと同様、市場における「競争電源」として位置づけるかを、政府が明確にする必要がある。その際、例えば、リプレース分や政策的意義が大きいものは公益電源、既存分は競争電源という区別もありうるだろう。


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