2024年4月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月1日

 昨年、米国の国家情報会議は、「2030年までにインドは、中産階級を軸として世界最大の成長力を提供するだろう。それは中国経済を活力においてしのぐであろう」との予測を行ったが、その前提とされた高成長が危うくなっている。停滞が続くと、米印の協力関係ばかりでなく、インドがグローバルな役割を果たす大国となることも難しくなるだろう、と論じています。

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 筆者は米国で学位を取り、米国で活動するインド人ジャーナリストです。

 丁度、上記論評記事の翌日9月27日、インドのシン首相は、オバマ米大統領とワシントンで会談をしました。が、米印原子力協力協定の締結後初めて、原子力関係の商談締結を確認したくらいが、二国間関係での成果だった様です。

 2001年、ゴールドマン・サックスのジム・オニールがBRICsのバラ色の将来について書きたてて以来、世界はその幻影の下に生きてきました。

 現在、BRICs諸国はほぼ軒並み、内部の構造的問題を露呈させ、成長率を低下させています。世界は表面の数字を見てBRICsの成功に幻惑されてきましたが、数字の質、内実を十分見なかったつけを今払わされています。

 ロシアは、そのGDPの3割を占めるエネルギー部門の世界価格が5倍以上にも急騰したことで、2000年代前半 GDPが6倍以上伸びる奇跡の回復を成し遂げましたが、原油・ガス価格が長期停滞の様相を見せている今、財政政策を180度転換し、歳出削減のやむなきに至っています。中国も、リーマン・ショック後の金融大盤振る舞いの後遺症克服と、国営企業中心という経済の停滞性を露呈しつつあります。インドは中央、地方双方におけるポピュリズム横行の中で、社会主義・集権経済的諸制度の残滓を除去することができずにいます。


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