2024年12月1日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月6日

 アジア政策を専門とする、米国のシンクタンクNBR(The National Bureau of Asian Research)が、10月2日に、“Strategic Asia 2013-14, Asia in the Second Nuclear Age”と題する報告書を発表し、その中の一章が日本の核政策の分析に充てられています。そして、北朝鮮、中国の核兵力増強、米国による核の傘の希薄化を目撃した日本では、核論議のタブーが薄れつつあり、核武装や非核の戦略的攻撃能力の取得等、様々な可能性が議論され始めているが、日本は当面、潜在的核保有能力をちらつかせることで、米国による核の傘を確保するやり方を続けるだろう、と分析しています。

 すなわち、米国の核の傘が縮小し、アジアにおける核の脅威がより大きく複雑になってきた現在、日本の核武装についてのアカデミックな議論を避けることは、もはやできない。

 日本は、核兵器を持たない国としては最大かつ完結した核燃料サイクルを築き上げ、核爆弾1000発分のプルトニウムを保有している。日本が核兵器保有を決断した場合、製造までにかかる推定時間は、半年から10年以上とまちまちであるが、核兵器開発能力があることは疑いない。日本は、ミサイル技術も潜在的には開発している。

 東日本大震災後、日本の原発は一時全面停止したが、自民党政権下で、関連企業は原発輸出を活発化させつつある。安全保障面での核アレルギーは、いつ消えるかもしれない。「日本の国土は小さすぎるので、核の先制攻撃を受ければ麻痺して、反撃の能力を失う」というこれまでの議論も、同じように小さな英国、イスラエルが核武装している事実を前に力を失うかもしれない。「米国は日本の核武装を絶対許すまい」という議論があるが、米国が予算の制約に悩む一方で中国と対峙しなければならない現在、米国の立場も変わるかもしれない。自衛隊はかつてない程、世論の支持を受けている。

 米国は1991年、これら陸上配備の核兵器は完全に撤去し、それ以降も同地域配備の核兵器の量を75%削減した。その中で抑止力の目玉とされたいくつかの兵器、例えばトマホーク巡航ミサイルも2010年撤去が発表された。米国では冷戦時代に作られた大量の核兵器は時代遅れのものと思われており、NPT加盟国の中で新たに核弾頭を製造する能力を持たない唯一の核保有国となっている。これは、北朝鮮などを核開発に走らせる要因になっている。

 北朝鮮は、日本が最も懸念する相手であるが、中国の核・通常戦力ははるかに大きな問題として、日本側関係者の心にのしかかっている。中国については、日米が通常戦力面での優位を維持することが肝要だと見なされている。これが破れた場合、米国は核戦力を動員しないだろうと思われている。


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