今月の旅指南

2013年11月22日

»著者プロフィール
閉じる

狩野直美 (かのう・なおみ)

東京生まれ。フリーライター。旅行業界誌の記者・編集者を経て、1994年からフリーランスに。主に海外旅行関連誌、ウェブマガジン等に記事を執筆中。

 「あえのこと」は、石川県奥能登地方の農家に伝わる農耕神事。「あえ」は「もてなす」、「こと」は「行事」を意味し、田の神をごちそうでもてなすのが特徴だ。毎年12月5日に、収穫に感謝するため田の神を家に招き入れる「田の神迎え」、翌年2月9日に「田の神送り」を執り行う。

 各家庭で代々伝えられてきた神事のため、起源について記した文書は残されていないが、江戸時代には現在の形で行われていたといわれる。

 「昭和52(1977)年の現況調査によると、略式も含めるとほとんどの農家であえのことを実施していました。それが最近では農業形態の変化や後継者がいないなどの理由で、神事を行う家が減ってきています」と、能登町教育委員会学芸員の新出(しんで)直典さん。

 能登町の柳田植物公園内にある合鹿庵(ごうろくあん)では、通常は非公開のあえのことを一般に公開、神事の一部始終を見学することができる。合鹿庵で「田の神迎え」が始まるのは午前11時。執行者が羽織袴の正装で、収穫が終わった田んぼに出向き、田の神を招き家まで案内する。そして家に迎え入れ、囲炉裏(いろり)で暖をとっていただき、お風呂に案内した後、御膳を用意して、おもてなしする。神様は目が見えないとされるため、声をかけながら案内をしたり、料理の説明をしたりしながら、神事は進められる。

田の神は夫婦二神とされるため、御膳は2つ用意される

 「御膳には、その年に収穫されたものや縁起のよいものが並びます。例えば二股大根は子孫繁栄を表していますし、口が大きいハチメという魚には収穫される米粒が大きく育つようにとの願いが込められています。また、刺身には出世魚のブリのお造りを、汁物は粘り強く仕事をするとの意をかけて納豆汁を用意します。合鹿庵では事前に予約すれば、御膳と同じ料理を味わうこともできます」

 家に迎え入れられた田の神は、家族とともに年末や正月を過ごし、2月9日の「田の神送り」の神事で再びもてなされた後、新たな年の豊作を祈願し、田んぼへと送り出される。

あえのこと(田の神迎え)
2013年12月5日
<会場>石川県能登町・柳田植物公園内合鹿庵(北陸本線金沢駅から高速バス)
<問>☎0768(76)1680
http://yanagida.main.jp/gourokuan.html

◆「ひととき」2013年12月号より

 

 

 

 
 

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る