2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月26日

 この問題には、次のような、米国の内政上の事情が背景にあります。米国の下院の選挙区は、人口の変動に応じて、国勢調査毎に再編されるようになっています。しかし、選挙区の区割りを決めるのは、州議会なので、線引きはどうしても現職有利となります。時として、地理的条件を無視した、ゲリマンダーと呼ばれる無理な線引きとなります。こういうことを200年やっているうちに、この選挙区は、共和党、あるいは民主党と初めから決まっている選挙区が出来てきます。

 そうなると、議員にとって大事なのは、最終的な国政選挙でなく、党の候補を選ぶ予備選の方になって来ます。予備選は選挙民全部でなく各党の活動家が多いので、勢い、共和党なら保守派、民主党なら、リベラル派に偏ることになります。

 本来二大政党制は、二つの党が、中道の票を争うことで、自ずから中正な政策が生まれ、選挙後も超党派合意が出来易いようになるべきものです。それが、米国の政治がこのように硬直化したため、この論説が言うように、有権者の15%の支持しかない極端な主張をする議員が当選するようになってしまいました。そしてまた、そうやって当選した議員は、次の選挙のためにも、その極端な主張を言い続けねばならないことになります。これでは妥協による超党派の政治が行われなくなります。

 共和党は、民主党も合意出来るような現実的な妥協案を提示すべきであり、それが又次の全国的国政選挙で勝つ道であるという、ハンツマンの意見は正論です。しかし、その正論が通らないのが現実のようです。選挙制度見直しの論もあるようですが、それは容易に実現するものではないでしょう。

 とすると、このような状況が米国政治の宿痾となるわけです。それはまた、共和党だけの問題ではなく、カリフォルニアの例などを見ると民主党のリベラル派選出にもあてはまるようです。

 国際政治におけるアメリカの責任の大きさを考えると、肌寒いような状況ですが、こういう現実があることを知っておく必要があります。

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