2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月29日

 中国の提案している「善隣友好協力条約」については、今後慎重に検討されなければならない。現在、東南アジア諸国が締結しているASEAN友好協力条約は、基本的な考え方を同じくする全ての外部の国々にも開放されているが、中国の提案する条約は排他的であり、中国と東南アジア諸国のみを対象とする条約を目指しているようである、と述べています。

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 目下、ASEAN諸国は中国との間で、南シナ海の航行、安全保障等をめぐって「行動規範」を策定するために交渉しています。しかし、その作業は中国側の引き延ばし作戦のために順調に進んでいない模様です。このような状況下で、中国は今回のAPEC総会、ASEAN首脳会議に合わせ、中国とASEAN諸国との間で「善隣友好協力条約」を締結するとの構想を打ち出してきました。

 この中国側提案の内容が如何なるものになるかについては、いまだ不明瞭ではありますが、セイヤーの指摘するように、習近平政権としては、ASEAN諸国の中国に対する不安感や警戒心を和らげることを意図しているものと見られます。

 今日、中国・ASEAN間の最大の問題が南シナ海の「行動規範」の策定である以上、ASEAN側にとっては南シナ海問題を度外視して「善隣友好協力」という抽象的な原則に合意することがどの程度の意味を持つものか判断に苦しむところでしょう。日本、米国等にとっては、この条約のメンバー国が中国・ASEAN諸国以外に開かれていないところには、注意と警戒を要するでしょう。

 また、中国は今次APECの会合に合わせ、台湾の馬政権に対し、そろそろ経済面での協議を終わり、政治協議に焦点を移したい、との意図を公式に表明しました。ASEANに対する「善隣友好協力条約」締結の提案と台湾に対する政治協議の呼びかけは、ともに習体制の対周辺地域外交の方向性を、いまだ明確ではありませんが、漠然と示すものとなりました。ただし、現在のところ、それらは、中国側の一方的主張に留まっている感があります。

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