2024年4月24日(水)

中国メディアは何を報じているか

2013年11月22日

 西側には最近一つの論調がある。「亡党者は共産党」というものだ。我々党員は信仰を失ってしまい学んだものと考えることが違うようになってしまった。思ったことと言っていることが違い、言っていることとやっていることが違う。果ては私利私欲で動き、人のために奉仕せず、民衆を食いものにする。我々党が誕生してからというもの、マルクス主義が自身の旗の上に書いているように、人民への奉仕が神聖な主旨であり、共産主義確立の最高の理想だった。今日我々は信仰を高く堅持し、前を向いて進むだけでなく、来た道を振り返り、歴史を鑑として「初心、忘るべからず」に振る舞う必要がある。

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【解説】

 中国人民解放軍を誇る作家将軍による御題目である。このような精神論が市場経済の恩恵を受けている「八〇後」と呼ばれる1980年代生まれ、「九〇後」と呼ばれる1990年代生まれの若い兵士たちに通じるのだろうか。

 こうした疑問はさておき、劉亜洲将軍は軍きっての理論家であり、作家でもあり、そして物言う将軍でご意見番として一目置かれる存在である。ところがこうした保守的な意見を吐くとはどうしたことだ。一つには軍を巡る厳しい世論とそうした環境に置かれた軍の苦境があるかもしれない。10月30日のコラムで軍が汚職にまみれ、民衆から離れた存在になることへの懸念を示した将軍の主張を紹介したばかりである。習近平指揮下の軍隊として解放軍が効率の良い機能的で清廉潔白な軍であるために汚職撲滅を図っていることは報道される通りだ。

 もう一つは解放軍ならではの政治的に社会をリードする軍の役割がある。共産党の軍隊である中国人民解放軍を巡り「党の軍に対する絶対指導」というフレーズが繰り返し強調されるのは、政治思想的に堅固で党へ忠誠を誓う側面がある一方、軍が政治をリードする側面もある。軍こそが共産主義の親衛隊だ、と言わんばかりに政治将校たちが保守的な主張を繰り返すのはそのような自負があるためだ。劉将軍がイデオロギーの陣地を占拠せよ、と意気高々に主張するのもそうした考えがあるからだろう。

 IT時代に入り、共産党や軍は反政府的な監視を強める一方で、世論を自分たちの思う方向に誘導しようという考えが出てきた。政治教育やプロパガンダに力が入れられるのはそのためだが、いまだにこうした時代錯誤的なやり方が通じると思っているということだろう。それともそれ以外の選択肢が見当たらないのか。

不明な点が多い主張

 劉将軍は習近平国家主席にも近いとされ、この文章でも軍の立場からイデオロギー面で習政権を援護していると捉えることもできる。時期的にも習近平が党中央の宣伝会議でイデオロギーの重要性を強調したことを受けてかもしれない(このスピーチは「819講話」として学習が呼びかけられている)。


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