チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月25日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中国に抑止は効いているのか?

 日中が共に、相手が自らを威嚇・挑発していると認識して、言動をエスカレートさせる状況が止まらない。このエスカレーションを見るとき、日中両国の行動が相手の行動を抑止しているようには見えない。

 一般的に言われる「抑止」は、「相手が自らに害を与えるような行動に出るならば、相手に重大な打撃を与える意思と能力を有することを、予め相手に明示することによって、相手が有害な行動に出ることを思い止まらせること」と、定義できる。日中両国は、正に、打撃を与える意志と能力を明示し合っていると言える。

 中国に対して抑止は効いていないのか? 答えは、イエスでもあるし、ノーでもある。

 そもそも中国軍の無人機は領空侵犯していない。有人機を含めた航空機で見ても、尖閣上空での領空侵犯は一度である。この一度も、海監(当時)の航空機によるもので、軍によるものではない。中国人民解放軍は航空自衛隊の能力を承知している。中国軍機が日本の領空を侵犯したら、直ちに航空自衛隊の戦闘機が対処することも理解している。中国は、領空侵犯がエスカレーションを招くと認識しているのだ。だから、領空侵犯はしない。この意味で、中国に対して抑止は既に効いていると言える。

 では、抑止が効いていないというのはどういう意味においてなのか。日本の「領空侵犯した無人機を撃墜する」という意志表示に対して、中国軍機が領空侵犯する代わりに「機動-5号」演習を実施した。別の場所、別の方法で、中国軍の領土保全の意志を示したことは、烈度ではなく、範囲のエスカレーションであるとも言える。

 抑止理論は単純でわかりやすいが、実際にはそんなに単純ではない。最も効果的な抑止は核兵器による抑止だが、日本は核兵器を有していない。通常兵器による抑止の試みは失敗することも多い。軍事力に差があっても、国内の状況等によって引けない時もある。「やられたら、やり返す」を繰り返して、エスカレーション・ラダーを上っていくのだ。

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