チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月25日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中国海軍の作戦能力の実態

 意志と能力を明示しなければ相手にわからない、という議論もある。しかし、本当にそうだろうか?

 「機動-5号」演習に関しても、報道等から理解できることは多い。まず、中国海軍の最近の動向を見て取れる。三艦隊が同時に艦隊を派遣して合同訓練を実施したのは、中国海軍が近年続けている、艦隊の機動運用を目指す努力の一環である。人民解放軍の統合運用の実現は、今年発表された中国国防白書の中でも、戦争準備とともに強調されている。中国人民解放軍は、日本や欧米同様、陸、海、空軍の統合運用を進めようとしている。その中で、中国海軍は各艦隊の機動運用を始めたばかりの段階にある。そもそも、中国海軍が、異なる艦種(駆逐艦とフリゲート)を組み合わせた艦隊を初めて運用したのは2004年で、それから10年と経っていないのだ。

 こうした艦隊運用の状況からも、中国海軍の作戦能力が十分でないことは容易に推し量れるが、演習の内容もそれを裏付ける。

 中国での報道は、中国海軍の三艦隊が何日も連続して対抗形式の訓練を実施したとしている。しかし、報道を詳しく見てみると、何日かにわたる応用訓練を実施したのではないようだ。ここで言う応用訓練とは、あるシナリオに基づいて行動し、水上、水中及び航空からの複合脅威に随時対応する訓練を指す。

 報道は、対水上戦訓練の様子を取り上げ、「対水上戦の要は、ヘリコプターによるOTHT(Over the Horizon Targeting)である」と述べている。OTHTとは、艦艇搭載レーダーの電波が届かないレーダー水平線以遠の敵水上目標を、ヘリコプターでターゲティングするものだ。報道は、「各回の訓練の間に、参謀は問題を解決するための議論をした」と述べている。対水上戦訓練を繰り返し実施したということだ。筆者は海上自衛隊のヘリコプター・パイロットであったので、OTHTのための飛行訓練も繰り返し実施した。

 ヘリコプターは単に飛べば良いというものではない。各種戦闘には、それぞれの飛び方があり、それぞれに知識と技術が必要とされる。OTHTでは、敵艦隊のレーダーに探知されないよう低高度を高速で飛行し、味方艦隊の位置を特定されにくいポイントでポップアップする。急上昇するのだ。このポップアップにも特別な操縦法が要求される。どの高度でレベルオフ(水平飛行に移行)して、レーダーをどのように使用し、どうダイブ(急降下)するのか、細かいところにまで全てノウハウがある。

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