ちょっと寄り道うまいもの

2009年4月29日

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 それ以上に参ったのが、じっくりと炭火で焼いたもの。そのまま食べても良いのだが、殊に酢を少々きかせた醤油で食べると絶品なのだ。瀬戸内の美味は多々あるから、目移りしないでもないが、それにしても、これだけで、ご飯がいっぱい食べたい、食べられると思わされるうまさ。フグやアワビのように、その場の主役ではなく、ご飯の名脇役というべきうまさ。

 あら、やっぱり、ママを借りたいというのはオーバーではないか?

 閑話休題。この地域のママカリという名があまりにも有名だが、この名前はいわば方言。一般的にはサッパという。鯯と書く。東北以南の河口、内湾のような汽水域に広く分布している、ニシンの仲間である(だから、ニシンやコハダに近い味わいでもある)。よそにもいるが、瀬戸内海のあたりでは珍重されているということなのだ。江戸前寿司が生まれ育つ中で、コハダという美味が発見されたのと同じように、この地域の人々がママカリのうまさを発見したのだ。

 岡山に来たら、もう一軒、必ず顔を出す店がある。寄らねば損という店。岡山郊外の赤磐(あかいわ)市にある「ひさ田」という寿司屋である。

 新興住宅地にぽつんと一軒、という変わった寿司屋だが、これがよろしい。寿司だけはお江戸でなければという偏見の持ち主に、誤解だったと教えてくれた店である。センスと技量さえあれば、その土地の地魚で、銀座の名店にも負けぬ寿司が出来ると。

 また、同じ岡山県の吉田牧場のモッツァレラチーズを「づけ」にして握ったりの、ユニークなものでも完成度が高く、首都圏や関西の食いしん坊がわざわざ訪ねるのも当然という店。

 ママカリは皮が比較的厚いので、包丁の入れ方で、味わいも違うと、握りであれこれ試させてくれた。なるほど、全然食感が違う。しっかりと歯触りを感じたり、口の中で溶けたり。どちらが好ましいか、悩ましいが、新鮮なものを丁寧に料理したら、美味しい素材であることは間違いないと再認識した。

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