2024年4月26日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2013年12月11日

 さて、オリンピック招致のプレゼンで日本流の「お・も・て・な・し」をIOC委員にアピールしたと注目されたが、本来の「おもてなしの心」とは茶の湯の「わびさび文化」から出た、見返りを超越した精神である。見返りを求めない精神とは外国人にはなかなか理解しにくい。なぜなら、アメリカや中国などではサービスすることはチップを貰うことと同義語だからである。

 つまり一般的にサービスする義務は、対価を貰う権利と一対になっているのが当たり前という考え方である。ところが、日本人は権利と義務の関係を明確化することは露骨に感じるので肌合いに馴染まない。ベトナムの半島国家としての地政学的複雑性なども織り交ぜて中国と比較すると大変に興味深いが、ベトナムではチップを期待する習慣は一切ない。

 ベトナムでは中国と違って直接的な要求は出てこない。どちらかと言えば持って回った言い方で真綿にくるんだような発言が多い。言わなくても分かるでしょうといった雰囲気を醸し出してくる。以心伝心の日本文化にも通ずるが、別の見方をすると外交上手で知らないうちにペースに持ち込まれている気もする。おもてなしとは英語になおすとホスピタリティのことである。サービスとホスピタリティの違いは関係性の違いからきている。

 サービスとは英語のSlave(奴隷)やServant(召使い)という言葉からも分かるように、サービスを受ける立場に主従関係がある。だから主人は召使いに金銭を与えるのである。一方、ホスピタリティは英語のHospital(病院)やHospice(ホスピス)から理解できるが、対価を求めるのではなく、自ら相手の役に立つとか貢献するとか、相手に喜びを与えることに重きをおいているので報酬を求めている訳ではない。

 どうやら日本とベトナムは文化的伝統が類似しているようだ。日本人のルーツは雲南省だという説があるが、雲南省からベトナムを経由して東シナ海を通って漂着した民族が日本民族になったのかもしれない。

◆WEDGE2013年12月号より










 

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